富士フイルム、先端半導体材料の開発を加速する新棟が完成:工場ニュース
富士フイルムの半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズの静岡工場(静岡県吉田町)内で建設が進められていた先端半導体材料の開発/評価用の新棟が完成し、2025年11月に稼働を開始した。
富士フイルムは2025年11月25日、半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(以下、FFEM)の静岡工場(静岡県吉田町)内に建設していた開発/評価用の新棟が完成し、同年11月に稼働を開始したと発表した。
今回の投資を通じて、開発品の性能評価や製品の品質評価を行う体制を拡充することで、先端/次世代半導体向け新規材料の開発加速や、高品質な製品のさらなる安定供給を実現する。
水害に備えクリーンルームを地上12mに配置
近年、AI(人工知能)や5G、IoT(モノのインターネット)の普及により、半導体市場は急速に成長しており、特にAI半導体などの先端半導体の需要が急増している。富士フイルムの半導体材料事業は、2021年度から2024年度にかけて売上高が約1.7倍に拡大し、富士フイルムグループの成長をけん引する中核事業の1つとなっている。
こうした成長を支えるため、2021年度から2024年度にかけて1000億円以上の設備投資を実施し、2025年度から2026年度にかけてさらに1000億円以上の投資を計画している。
静岡工場の新棟は、鉄骨造/全免震構造の地上4階建てで、延べ床面積は約6400m2となっている。用途は、先端レジストやイメージセンサー用/特殊効果材料「Wave Control Mosaic」の開発/生産のための品質評価機能強化(クリーンルームの設置/検査装置の導入などを含む)となる。投資金額は約130億円(建屋、装置含む)だ。
同棟では、高い清浄度のクリーンルームに先端評価機器を設置し、開発/生産のための品質評価機能を強化する。また、半導体材料に含まれる微粒子を検査する工程にAI画像認識技術を導入しその分析精度を向上させるなど、AIを活用した高度な品質管理体制を構築。
さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する部門を新棟に配置し、製造工程におけるAIなどのデジタル技術の活用拡大を支援することで、製品の品質向上と安定供給を実現する。加えて、事業継続(BCP)対策として、RC造柱頭免震構造を採用し、水害に備えクリーンルームを地上12mに配置した。
静岡工場は、日本市場に対してだけではなく、グローバルな研究開発/生産拠点と連携しながら、顧客の最先端プロセス技術開発を支援している。
今回の新棟立ち上げにより、極端紫外線(EUV)リソグラフィ用レジストやフッ化アルゴン(ArF)、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)などの先端レジスト、有機フッ素化合物(PFAS)フリー材料やWave Control Mosaicの開発を加速し、次世代半導体の進歩に貢献する。
また、これまでの投資により、次世代半導体パッケージのコア材料のポリイミドなどの開発/量産体制を強化している。今後も、AI半導体向けの需要増などに対応するため、生産能力の増強と多様な顧客ニーズにこたえる技術開発を進める。
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