25周年でもまだ“1合目”、大企業向けに活路見いだすMonotaROの次の一手:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
25周年を迎えたMonotaROの現在地と今後の展開について、同社 代表執行役社長の田村咲耶氏に話を聞いた。
デジタルデータを活用し「前後工程」を代替するサービスを提供
大企業向けで購買管理システムなどを提案していく中で、重要になってくるのが、デジタルデータの活用だ。MonotaROでは、購買に関する大量のデータが蓄積されており「いつ、どこで、どの工程が、何を購入する」ということが高い精度で把握できる。これを基に、顧客ごとの業界特性や工程、前後作業を踏まえた提案が可能となる。「例えば、手袋などは非常に多くの種類があるが、この工程に当てはまるスペックの手袋を絞って、現場ごとに最適化された商品レコメンドを行ったり、あるものを購入した際に必要になる関連商品を同時に高精度でレコメンドしたりすることができる」(田村氏)。
前後工程に踏み込んだサービスとしては、2024年3月から開始した「棚・作業台 組立設置サービス」や、2025年4月に開始した「板金加工サービス」がある。棚・作業台 組立設置サービスは、棚や作業台の購入企業に対し、購入後に必要になる組み立てや設置を代わりに行うサービスだ。一方、板金加工サービスは、部材の購入時に穴を開けたり、曲げたり、簡単な加工作業を代替して行うものだ。その他、治具のカスタムや計測器や測定器の校正サービスなども展開している。
「われわれは時間価値の提供を目指している。前後工程でニーズが高いものについては、できる限り吸収し、サービスとして提供できるようにしていく方針だ」と田村氏は語っている。
さらに、購買管理システムによるデータを分析し、課題点解決に向けたソリューションや改善提案などを行い、顧客の購買活動の生産性向上に貢献する取り組みなども進めている。
同時に基礎体力となる、品ぞろえや物流センターの強化にも取り組む。2028年には新たに水戸市に物流センターを開設する予定で、さらに在庫の拡張や「翌日配送」の拡大を進めていく。「翌日配送を維持し続けるキャパシティーの強化は必要になる。また、人手不足への対策として物流センターでも先進技術を取り込んで生産性を高めていく必要がある。水戸DCでは、自動化や省人化を推進しており、従来比3倍の生産性を目指している」(田村氏)。
「本来の業務に集中できる環境」に向け間接資材DXを推進
田村氏は、今後の抱負として「25周年は通過点で100年企業を目指せるように成長を続ける」と語る。
「資材調達ネットワークの変革として目指す姿は、紙や人手を介在させずに必要なモノを必要なタイミングで届けられる世界だ。企業の調達業務に割かれている時間を削減し『本来の業務に集中できる』環境を作りたい。そのために、データとテクノロジーを活用したサプライチェーンの最適化は必須となる。間接資材DXをリードしていく」(田村氏)
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