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マイクロ波で触媒の1原子だけを加熱してCO2変換反応を促進:研究開発の最前線
東京大学は、マイクロ波を使用した加熱技術により、CO2とHからCO、H2Oを生成する逆水性ガスシフト反応を高効率に進めることに成功した。通常の加熱方法に比べて、4倍以上のエネルギー変換効率を示した。
東京大学は2025年10月11日、名古屋大学と共同で、マイクロ波を使用した加熱技術により、高いエネルギー変換効率でCO2(二酸化炭素)からCO(一酸化炭素)を製造する逆水性ガスシフト反応が進行することを世界で初めて実証したと発表した。
両者は2023年に、マイクロ波エネルギーがゼオライト触媒に含まれる「金属イオン活性点」に集中する現象を実験的に証明した。今回の研究では、ゼオライト触媒を丁寧に設計することで、マイクロ波エネルギーが集中した金属イオン活性点を用いてCO2の転換反応を行い、高いエネルギー効率で化学反応を進行させることに成功した。
同研究のポイントは、マイクロ波エネルギーをゼオライト触媒に含まれる単一原子にのみ集中させることで、化学反応に必要なエネルギーを効率的に注入した点にある。実験室スケールで、通常の加熱方法に比べて「マイクロ波-to-化学反応のエンタルピー変化」の指標が4倍以上となった。
今回の成果は、マイクロ波と再生可能エネルギーの親和性の高さによる化学産業電化と、高効率なCO2の両面から化学工業のグリーントランスフォーメーション(GX)に貢献すると期待されている。
COは、さまざまな有用化合物の原料として化学工業全体で広く使用される。今回の技術は、地球温暖化の原因となるCO2から有用化合物を作る炭素循環社会に貢献する。
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