日本トリムがナノファブリック型新規高機能性白金電極触媒を開発:研究開発の最前線
日本トリムは、東京大学との共同研究により、ナノファブリック型新規高機能性白金電極触媒を開発した。
日本トリムは2024年11月28日、東京大学との共同研究により、ナノファブリック型新規高機能性白金電極触媒を開発したと発表した。
従来触媒に比べ白金量を約150分の1に
白金(Pt)は水素発生反応を促進する模範的な電極触媒とされており、白金の高い触媒効果を維持しながらその担持量を減らすことが求められている。
こういった背景を踏まえて、両者は単層カーボンナノチューブから構成されたナノファブリックを白金で覆う手法を使い、白金の担持量を1cm2当たり10μg以下まで減らすことに成功した。このナノファブリック型白金電極触媒を使い水素発生反応を行ったところ、白金触媒のエッジサイドは水素原子の生成に寄与することを世界で初めて明らかにした(東京大学/日本トリム調べ)。
具体的な成果に関して、開発したナノファブリック型の白金電極触媒は、従来型の粒子状白金/炭素電極触媒と同等の水素を発生させる際の面積当たりの白金量を約150分の1に減らすことができた。
図1 ナノファブリック型白金電極触媒の走査型電子顕微鏡写真。白金に覆われたカーボンナノチューブがファブリック状(織物状)に絡み合っている。図中の数字はカーボンナノチューブの太さで単位はnm[クリックで拡大] 出所:日本トリム
白金電極触媒のエッジサイドから電子が放出され、電気二重層中の水和水素イオンがこれらの電子を受け入れ、水素原子(H)に還元されることも判明した。
図2では、Aは単層カーボンナノチューブを鋳型とするナノファブリック型の白金電極触媒の模式図で、六角形の網目を持つ筒状の部分が単層カーボンナノチューブ(図では2本)。その周りは、白金原子の並び方が異なる3種類の白金結晶で覆われている。
Bは3種類の白金結晶から成るエッジサイド(段丘)からの放電の模式図で、白く光っている稲妻部分が電子の放電を示している。
Cは水素原子生成の模式図で、放電された電子が、電気二重層中の水和水素イオンと結合し、水分子(H2O)と水素原子が生成する。水素原子は白金段丘上にトラップされ、H-Pt(白金が水素原子の段丘上にトラップした)状態を形成する。
Dは水素分子生成の模式図で、トラップされている水素原子が過剰になると、2個の水素原子が結合し、水素分子(H2)となって、水中に放出される。
今回の成果により、高価な貴金属である白金の量を減らした電極の開発が可能になったことから、水素生成製品を低コストに製造することが期待される。また、単層カーボンナノチューブ素材を使用しており、軽くかつ曲げることが可能なため、多様な用途が期待できる。水素製造の効率も高められることから、エネルギー用水素製造での応用が期待される。
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