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						カルシウムイオンによる置換でナトリウムイオン電池の安定性を向上:研究開発の最前線
東京理科大学は、ナトリウムイオン電池の正極材料NFMのナトリウムイオンを1wt%のカルシウムイオンで置換し、電池特性を維持しつつ耐水性の向上に成功した。
東京理科大学は2025年10月14日、ナトリウムイオン電池の正極材料として期待されるP2型Na2/3[Fe1/2Mn1/2]O2(NFM)のナトリウムイオンを1wt%のカルシウムイオンで置換し、優れた電池特性を維持しつつ耐水性の向上に成功したと発表した。
同研究では、高容量材料のNFMを対象とし、ナトリウムイオンの一部を1wt%のカルシウムイオンで置換したNCFMを合成。特性評価の結果、放電容量約190mAh/g、容量維持率72%を達成し、50サイクルまで安定動作した。
今回の技術の解説動画[クリックで再生] 出所:東京理科大学
湿度65%で2日間大気暴露しても、放電容量の損失は見られず、大気安定性が大幅に向上した。表面分析により、大気暴露でカルシウムイオンが粒子表面に移動して、カルシウム濃度の高い層を形成し、大気中での分解反応を抑制する鍵となっていることが判明した。
NFMは、リチウムイオン電池に匹敵する性能を示すため、実用化を見据えて広く研究されている。しかし、大気中での安定性の低さによる性能劣化が、実用化への大きな障壁となっていた。同研究成果は、大気安定性の課題を解決し、ナトリウムイオン電池の実用化を促進すると期待される。
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