溶接技能をIoTで見える化し継承 今野製作所など3社が訓練支援システムを披露:CEATEC 2025
今野製作所は「CEATEC 2025」のTIRI(東京都立産業技術研究センター)ブースにおいて、溶接技能を見える化してIoTによるデジタル化を推進する「溶接技能訓練支援システム(Doctor Welding)」を披露した。
今野製作所は「CEATEC 2025」(2025年10月14日〜10月17日、幕張メッセ)のTIRI(東京都立産業技術研究センター)ブースにおいて、溶接技能を見える化してIoT(モノのインターネット)によるデジタル化を推進する「溶接技能訓練支援システム(Doctor Welding)」を披露した。同システムはTIRIからの支援を受けて、今野製作所、エー・アイ・エス、Creative Worksが共同研究した成果であり、現在はCreative Worksが同システムを基にした溶接技能育成サービスを事業化している。
モノづくりのさまざまな工程の自動化が進む中で、溶接は人手で行われることが多い作業であり、その習熟は作業者一人一人の経験や積み重ねに大きく依存してきた。現場任せのOJTによる教育が一般的であり、このことに起因する作業者の技能のばらつきや技術継承の難しさが顕在化してきている。加えて、熟練技能者の高齢化が進んでおり、その高い溶接技能を次の世代に継承するための効率的かつ確実な手法も求められている。
これらの課題を解決するために今野製作所、エー・アイ・エス、Creative Worksの3社は2019年ごろから、TIRIの支援を受けて溶接技能訓練支援システムの開発に取り組んできた。2022年12月には開発を完了している。
開発した溶接技能訓練支援システムでは、溶接中の動きと溶けた金属の様子をモーションキャプチャーやハイスピードカメラで記録することで作業を「見える化」し、熟練者と訓練者の違いが分かるようにした。作業者や加工条件などの情報をデータベース上に登録し、指導者が評価/分析した内容をレポートとしてまとめ、いつでも見返せるようにしている。また、溶接の種類や板厚ごとに標準データを整備して、訓練や現場での参考にできるようにした。これによって、異なるタイプの溶接作業にも応用できるようになっており、広く生産性の向上につなげられる。
完成したシステムは今野製作所だけではなく、初心者向けの講習や溶接技能育成サービスとして職人を育成する「溶接塾」で教えるプログラムに活用している。「溶接塾には、セカンドキャリアとしてモノづくりをしてみたいという人が参加をして、実際に技術を学んでいる。溶接塾は都内の鉄道駅の最寄りにあってアクセスしやすく、中のデザインにも溶接技術を取り入れている」(TIRIの担当者)。
現在の溶接塾では、職人を目指す人から趣味で溶接をやりたい人まで、幅広い層に溶接技術を教えている。CEATEC 2025のブースでは、実際に溶接で作成した作品を展示していた。「個人の塾生は現在約6人おり、企業からも研修という形で訪問してきている。個人向けのコースでは合計12回のコースを設けており、ある程度の技量が身に着くようにプログラムを組んでいる」(Creative Worksの担当者)。
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