なぜNTTは「純国産」LLMにこだわるのか、専門知識を強化した「tsuzumi 2」提供開始:人工知能ニュース(2/2 ページ)
NTTは従来モデルから機能強化したLLM「tsuzumi 2」の提供を開始した。日本語性能や特定業界の専門知識を向上しつつ、引き続き1GPUでの動作を可能にすることでオンプレミス環境への導入のし易さを維持した。tsuzumi 2をNTTグループのAI戦略の中核と据える。
2つ目の強化点は、「特化型モデルの開発効率向上」だ。中でも、顧客からの相談が多かった金融、医療、自治体を中心に、事前の専門知識に基づく業務対応能力(ファインチューニング)を強化した。
tsuzumi 2は日本特有の知識を事前に強化しており、海外製の他モデルより少ないデータ量でファインチューニングできるという。例として、ファイナンシャル・プランニング技能検定2級の合格に必要な事前学習量は、Googleの「Gemma-2 27B」と比較すると約10分の1(200問)で済むという結果を示した。
ハードウェアコストは10分の1程度と試算
また、tsuzumi 2はパラメータ数を30B(300億)とすることで、引き続き1GPUでの動作を可能としている。これによりオンプレミス環境に導入しやすいとともに、ハードウェアコストは他モデルと比較して、10分の1〜20分の1程度に抑えられるという試算も示した。
生成AIの運用で課題となるセキュリティと安全性に関しても、差別的表現や情報の悪用/誤用、情報漏えいなどを抑制するLLM自体の安全性についても高いスコアを記録しているという。
NTTは、汎用的なタスクにはOpenAIやGoogleなどの汎用生成AIモデルを活用しつつ、企業の機密情報や専門知識が求められるクローズド領域にはtsuzumi 2を提供することで、顧客の多様なニーズに対応していく方針だ。
また、富士フイルムビジネスイノベーションとの連携も開始した。同社のAI技術ブランド「Recti」でデータを構造化し、tsuzumi 2で学習させることで、企業固有の「非構造化データ」の活用を促進する。
今後は、トヨタ自動車と共同開発するモビリティAI基盤や、GMS(総合スーパー)大手のトライアルホールディングスと進めるサプライチェーン全体の効率化を図るリテール向け連鎖型AIなど、産業別の展開も加速させる方針である。
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