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生成AIとアセットマネジメントで変える設備保全設備保全DXの現状と課題(6)(1/3 ページ)

本連載では設備保全業務のデジタル化が生む効用と、現場で直面しがちな課題などを基礎から分かりやすく解説していきます。今回は、急速に普及する生成AIと、アセットマネジメントの視点から見た設備保全データの価値を取り上げます。

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 これまでの連載では、設備保全の重要性、設備保全市場の動向、設備保全の現場で起きている構造問題を整理してきました。最終回となる本稿では、急速に普及する生成AI(人工知能)と、アセットマネジメントの視点から見た設備保全データの価値を取り上げます。

⇒連載「設備保全DXの現状と課題」のバックナンバーはこちら

製造業に広がる生成AIの活用

ChatGPT、Copilot、Geminiをはじめとした生成AIの急速な普及

 2023年以降、ChatGPT、Copilot、Geminiといった生成AIは瞬く間に普及し、ホワイトカラー業務を中心に活用が広がっています。製造業においても、議事録やメールの添削だけでなく、研究開発/設計/製造現場での活用が本格化しています。

 これまでも資金が潤沢に用意できる大手企業を中心として自動化、AI効率化の取り組みは行われてきました。近年の生成AIはその導入コストと精度が各段に改善され、中小企業が市場全体の90%以上を占める製造業において、全方位的に導入しやすくなっています。

本格化する設備保全領域で期待される生成AIの利用シーン

 設備保全の現場でも、さまざまな活用が期待されます。下記に、いくつかの具体的な活用例を記載します。これらの一部は既に実現されており、今後もさらに利便性が上がっていく見込みです。

  • テキスト入力の補助による、現場作業の生産性向上

 生成AIが入力したいテキストを予測したり、記入ミスを送信前に指摘してくれたりします。これにより、報告書や日常点検記録をより短時間で作成できるようになります。担当者によって異なる入力の粒度をそろえる効果も期待できます。

 現場での点検/修理に関する情報整理が速くなり、実際の作業に割り当てられる時間が増えていきます。

  • 表記揺れの大きい検索補助による、技術伝承の効率改善

 「モーター」「Motor」「MTR」などの揺れを吸収し、関連履歴を横断的に検索できるようになります。写真などの映像から必要な情報を読み取る力も向上し、これまでの暗黙知を形式知化しやすくなり、次世代のエンジニアへの技術伝承の効率が改善されます。

  • 自社規定に合わせたQAによる、競争力の強化

 社内ルールや保全マニュアルを参照した自動応答で日々のメンテナンス品質が改善されます。これにより、自社が得意とするものづくりの稼働率/品質を継続的に向上させ、さらに競争力を高めるための研さんの時間を創出することができます。

生成AIによって、点検記録テキストのミスを検出
生成AIによって、点検記録テキストのミスを検出

 こうした取り組みはまだ始まりにすぎませんが、生成AIは「人の判断を補助するツール」として、保全現場の効率化と知識伝承に寄与していきます。

生成AIが生み出す価値をどう扱うか

 生成AI活用そのものについては、今後多くの記事や事例が登場する見込みです。ここからは、「生成AIが生み出す価値をどう扱うか」に焦点を当てます。その中心となる軸が、「アセットマネジメント」の考え方です。

 生成AIの活用によって爆発的に生成/整理される情報を、どのように自社、パートナー、顧客、そして市場に対する共通の価値として活用していくかが、このアセットマネジメントの重要な視点となります。

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