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身体が引っ張られる! 脳が錯覚を起こす3Dハプティクス技術搭載「ふしぎな石ころ」CEATEC 2025

村田製作所は「CEATEC 2025」において、「ふしぎな石ころ“echorb”」を披露した。指先に特殊な振動を与えて脳の錯覚を引き起こすことで、引っ張られたり回転したりする感覚を生む3Dハプティクス技術を搭載したデバイスだ。

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 村田製作所は「CEATEC 2025」(2025年10月14〜17日、幕張メッセ)で、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」のシグネチャパビリオンでも展示された、「ふしぎな石ころ“echorb”」を同社ブースで披露した。echorbは指先に与える特殊な振動により、まるで引っ張られる感覚や回転する感覚を脳に生じさせる、3Dハプティクス技術を搭載したデバイスだ。

3Dハプティクス技術を搭載した「echorb」
3Dハプティクス技術を搭載した「echorb」[クリックで拡大]

 「実際に触れてこそ分かる」ということで、石の形をしたechorbを手渡された来場者が、どのような感覚になるのかを確かめる形でデモ展示が行われている。来場者は親指と人差し指で石(デバイス)をつまみ、中指から小指は添えるようにして持つ。村田製作所の説明員がリモコンで操作すると、石が振動し、腕全体が右や左に引っ張られるような感覚が生じた。

 また、左右や前後の動きに加え、ぐるっと回転するような感覚や、石を耳元に近づけて振るとまるで水が入っているように感じる現象も確認された。デバイスにはコードやプロペラなどの外力を働かせる機構が搭載されているわけではなく、文字通り「ふしぎな石ころ」だ。

(左)体験時はデバイスをつまむように持つ(右)複数人が同時に体験できる (左)体験時はデバイスをつまむように持つ(右)複数人が同時に体験できる[クリックで拡大]

脳の錯覚を生み出す3Dハプティクス技術とは?

 このような不思議な感覚を可能にしているのが、村田製作所グループのミライセンスが開発した「3Dハプティクス技術」だ。ミライセンスは、2003年に産業技術総合研究所の中村則雄氏が発明した「錯触力覚技術」を普及させるため2014年に創業したベンチャー企業で、2019年に村田製作所グループ入りした。

 3Dハプティクス技術は、特殊な波形の振動を組み合わせて、三原触と呼ばれる「力覚」「圧覚」「触覚」を同時に再現し、それらが皮膚を刺激することで、脳の錯覚を誘発し実在しない力や質感を感じさせるものだ。

echorbの内部回路
echorbの内部回路[クリックで拡大]

 デバイス内のアクチュエータ(振動源)にも独自の技術を用いている。従来のアクチュエータである単振動型LRA(Linear Resonance Actuator)は、1方向にのみ振動を出力するのに対し、2方向出力型のWLA(Wide band Linear Actuator)を開発/実用化し、これをechorb内に2つ搭載した。

 これら2つのWLAの振動方向を制御することで、指先に伝わる力の向きや変化を巧みに演出しているという。

(左)三原触と呼ばれる「力覚」「圧覚」「触覚」を同時に再現(右)2方向出力型のアクチュエータを開発 (左)三原触と呼ばれる「力覚」「圧覚」「触覚」を同時に再現(右)2方向出力型のアクチュエータを開発[クリックで拡大]出所:村田製作所

 3Dハプティクス技術に加えて、echorb内にはLF(長波)受信アンテナを搭載している。同製品を展示した大阪・関西万博では、パビリオン中に埋め込んだLF送信アンテナからの信号を受信することで位置検知を実現し、来場者を誘導するようにデバイスが引っ張る演出や、特定の展示前でデバイスが点滅する演出が行われた。

 大阪・関西万博の会期に合わせて企画/開発したechorbだが、ミライセンスと村田製作所は引き続き3Dハプティクス技術の開発を進めていくという。短期的にはまずゲーム分野での活用を目指し、将来的にはリハビリテーションや視覚障がい者への支援など、医療やヘルスケア領域での活用も視野に入れている。

 2025年9月末に開催された「東京ゲームショウ2025」では、コナミデジタルエンタテインメントブースの「SILENT HILL(サイレントヒル) f 残置物展」のゲーム演出にechorbが採用された。

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