村田製作所は中期方針2027で再び売上高2兆円に挑む、AI需要でさらなる上振れも:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
村田製作所が2025〜2027年度の中期経営計画「中期方針2027」を発表。「中期方針2024」の目標である売上高2兆円、営業利益率20%などの目標が未達となることが確実な中で、あらためて売上高2兆円、営業利益率18%以上を目標に据えて、AIがドライブするエレクトロニクスの飛躍的な成長を捉えていく方針である。
村田製作所は2024年11月25日、オンラインで会見を開き、2025〜2027年度の中期経営計画「中期方針2027」を発表した。2022〜2024年度の「中期方針2024」の目標である売上高2兆円、営業利益率20%などの目標が未達となることが確実な中で、あらためて売上高2兆円、営業利益率18%以上を目標に据えて、AI(人工知能)がドライブするエレクトロニクスの飛躍的な成長を捉えていく方針である。
同社 代表取締役社長の中島規巨氏は「中期方針2024について、経済価値目標は一言で言って大きく未達。環境対応などの社会価値目標についてはおおむね順調に推移している」と語る。実際に、中期方針2024で掲げた経済価値目標は、売上高2兆円、営業利益率20%以上、ROIC(税引き前)20%以上だったが、2024年度通期業績予想では売上高1.7兆円、営業利益率17.6%、ROIC(税引き前)13.8%にとどまっている。インフレなどの景況感の悪化による需要減少が目標未達の大きな要因となるが、「xEV(電動車)やAIサーバを含めたデータセンターなど厳しい中でも伸びている市場により早く対応できなかったか」(中島氏)を反省点として挙げている。
これまで村田製作所の営業利益率は1985年、2000年、2015年と約15年ごとにピークを迎えている。1985年はヘッドフォンステレオなどAV機器の小型化、2000年はPCを中核としたITバブル、2015年は移動体通信技術の進化によるスマートフォンやタブレット端末の市場拡大がけん引役になっている。中島氏はこのことを「Innovator in Electronicsの波」と呼んでおり、次は2030年が同社にとって営業利益率のピークを迎える時期とみている。同氏は「2030年にエレクトロクス市場は、デジタルツイン上のシミュレーションの世界でいろんなことが決められ実践され、それがAIを使って現実世界にシームレスにフィードバックされるようになる。このことに対応するには、ハードウェアだけでなくその使い方を含めたソフトウェアやソリューションの提供がイノベーションを支えるだろう」と説明する。
そこで中期方針2027は、エレクトロクス市場において2030年に起こり得る事態に対応するため「解像度をどんどん上げていく3年間にしなければならない」(中島氏)とする。テスラやBYDの自動運転技術開発や、村田製作所のスマート工場の取り組みなどを例に挙げ、デジタルツインに基づくシミュレーションの導入と、現実世界へのシームレスなフィードバックが進み始めていることを強調した。
中期方針2027のターゲット市場は、現時点で強い製品を展開できている基盤領域として通信とモビリティ、新たな事業開拓を目指す挑戦領域で環境とウェルネスの4つになる。なお、通信については、スマートフォンやPC、ウェアラブルなどのエッジデバイスと、AIサーバを含めたデータセンターや基地局などのITインフラに分けるため、アプリケーションとしては5つに分かれることになる。
経営目標は、売上高は2兆円以上、営業利益はいったん大量生産系製品に注力する関係もあり中期方針2024の20%以上から引き下げ18%以上とした。なお、ROICの目標数値は税引き後に変更した上で、2024年度予想の10.2%から12%以上に向上させる。中島氏は「2025年度以降にオンデバイスAIやAIデータセンターなどで売上高が伸びる可能性が高いと考えており、10%の成長余地を見込んでいる。相当な上振れ余地があるのではないか」と期待を込める。そして2030年度の目標は、売上高2.5兆円以上、営業利益率20%以上、ROIC(税引き後)15%以上に置くとしている。
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