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鉄系全固体電池で330Wh/kgのエネルギー密度を達成:研究開発の最前線
名古屋工業大学は、資源豊富で安価な鉄系材料を活用した全固体電池において、世界トップクラスのエネルギー密度を達成した。
名古屋工業大学は2025年9月22日、資源豊富で安価な鉄系材料を活用した全固体電池において、世界トップクラスのエネルギー密度を達成したと発表した。
同研究では、全固体電池の開発に向けて、酸素よりも電気陰性度の高い塩素を含む塩化物電極に着目。過充電によって塩素ガスが発生(塩素脱離)する課題を解決するため、複数の塩化物電極の作動電位と塩素脱離の関係を調査し、固体化学で説明できる「レドックス準位モデル」を構築した。
その上で、鉄塩化物(Li2FeCl4)の一部を酸素で置換する「アニオン置換」を行い、酸化還元反応に関わるエネルギー準位(レドックス準位)を意図的に調整した。その結果、この新材料(Li2-2FeCl3-8O0-2)は、過充電時の性能劣化要因となる塩素脱離を抑制しながら、従来よりも大きなエネルギー密度(330Wh/kg-cathode)を達成した。
鉄は地球上に豊富にあり、安価で資源面でも安心して使える材料だ。鉄を使った電極材料で世界トップレベルのエネルギー密度を達成した今回の成果は、持続可能な次世代電池開発への大きな前進につながると期待できる。
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