2029年から米国は夜間自動緊急ブレーキが必須、小型軽量の赤外線カメラが最適解に:オートモーティブワールド[秋]2025
Comapl USAは、「第4回 オートモーティブワールド[秋]」において、夜間対応の自動緊急ブレーキに最適な小型軽量の車載遠赤外線カメラソリューションを展示した。
Comapl USAは、「第4回 オートモーティブワールド[秋]」(2025年9月17〜19日、幕張メッセ)において、夜間対応の自動緊急ブレーキ(AEB)に最適な小型軽量の車載遠赤外線カメラソリューションを展示した。2029年9月に米国で施行される新たな連邦自動車安全基準「FMVSS-127」によって義務化される、夜間に歩行者を検知できる自動緊急ブレーキの開発に最適とする。
同社は台湾のエレクトロニクスメーカーであるCompal Electronicsの米国法人である。主力事業は自動車部品やECU(電子制御ユニット)の製造だが、今回展示した夜間対応自動緊急ブレーキ向けの車載遠赤外線カメラソリューションを新規のITS(Infrared Technology System)事業として立ち上げた。日本オフィスも設立している。
展示した車載遠赤外線カメラソリューションは、QVGA(320×240画素)の遠赤外線カメラと、夜間の歩行者検知に対応するアルゴリズム「Comapl CDAT AI」から構成されている。遠赤外線カメラの外形寸法は2.5cm角であり小型軽量を特徴とする。消費電力も定格で3Wと低く抑えられている。検知距離は視野角24度で80m、視野角32度で60mとなっている。
FMVSS-127では、街灯のない月明かり程度の明るさ(0.2ルクス)の夜間に、ヘッドランプをロービームにしている条件で、一般道の制限速度を超える時速65kmで走行中であっても歩行者を認識し衝突を回避することが求められる。時速65kmでの走行中に歩行者を検知して自動ブレーキで停止するためには、センサーの検知距離としては40〜50m以上が求められる。
しかし、現行のADAS(先進運転支援システム)で広く用いられている可視光カメラの夜間の歩行者検出距離は約30mが限界であるため、そのままではFMVSS-127への対応は難しい。そこで可視光カメラ以外のセンサーとしてLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)の利用が想定されている。「当社の遠赤外線カメラはLiDARよりも小型軽量であるだけでなく、消費電力とコストを約3分の1に抑えられている」(Comapl USAの説明員)という。
また、歩行者などを検出するアルゴリズムについては、Comapl CDAT AIだけではなく、ユーザーとなる自動車メーカーやティア1サプライヤーが可視光カメラを用いた自動緊急ブレーキ向けに用いているものを活用できるという。
なお、Comapl USAは、レベル3/4の自動運転システム向けにSVGA(800×600画素)/SXGA(1280×1024画素)の遠赤外線カメラも開発中である。
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