超伝導方式量子コンピュータのサプライチェーン技術報告書を公開:製造マネジメントニュース
NECと産業技術総合研究所、理化学研究所、富士通は超伝導方式のサプライチェーンに関わる技術報告書を公開した。4者が共同で策定している、大規模量子コンピュータシステムに向けたロードマップの第一報となる。
NECらは2025年9月9日、超伝導方式のサプライチェーンに関わる技術報告書を公開した。NECと産業技術総合研究所、理化学研究所、富士通が共同で策定を進めている、大規模量子コンピュータシステムに向けたロードマップの第一報となる。
量子コンピュータの実用化、大規模化には、周辺機器や部材の高度化とサプライチェーンの構築が必要だ。国内の産業はデバイスや材料分野に強みを持つものの、現状は多くの企業にとって参入障壁が高い。
このような状況を踏まえ、4者は量子コンピュータシステムの技術仕様を明確にし、中小企業を含む幅広い産業の参入を促すため、報告書を作成した。1000量子ビット級以上の量子コンピュータの開発における要素部品の課題を抽出し、関連部品を開発可能な企業や研究機関などから情報を収集して、整理した。
同報告書では、信号増幅器、ケーブル、コネクター、高周波コンポーネント、希釈冷凍機、制御システムなど量子コンピュータシステム全体の要素技術や、大規模化に必要な開発要素を提示している。また、量子コンピュータに関する世界の主要機関の研究動向についても取り上げている。
約2年前の調査によると、超伝導量子コンピュータを構成する部品は日本企業によって開発されたものが最も多く(31種)、次がアメリカ(29種)と、ほぼ日米製の部品で超伝導方式の量子コンピュータを完成させられる状況だった。
しかし、部品の中には量子産業ではない通信産業の部品を転用したものも含まれており、国や研究機関の支援で、部品の小型化や高密度化が図られれば、大規模量子コンピュータ開発の障壁を下げることにつながる。また、部品転用元となった産業分野の技術力も高められる。
同報告書の公開により、素材、製造など幅広い産業分野から量子産業への参入を後押しし、安定した強固なサプライチェーン構築に貢献する。
今後は、光量子、中性原子、イオントラップなど他の方式についても同様の技術報告書を作成する予定だ。非量子産業の製品活用も含め、多様な企業の参入を促進する。
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