CO2の資源化触媒をAIで探索して従来性能を上回る材料を開発:研究開発の最前線
東北大学は、AIによる大規模データ解析により、CO2からCOへの電気化学的変換を触媒する最適な顔料色素を選定した。同色素を使用した多層構造の炭素系材料は、従来の金属錯体触媒を上回る性能を示した。
東北大学は2025年9月1日、最適なCO2(二酸化炭素)の資源化触媒を発見する目的で、AI(人工知能)による大規模データ解析を行い、220種類の候補物質の中から青色顔料のコバルトフタロシアニン(CoPc)が最適であることを導き出したと発表した。
今回の研究は、東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR) 特任教授のLiu Tengyi氏、教授の藪浩氏(主任研究者、同研究所水素科学 GX オープンイノベーションセンター副センター長)、特任助教のDi Zhang 特任助教、教授のHao Li氏(主任研究者)、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター(SRIS) 教授の野新平氏、准教授の吉田純也氏、北海道大学電子科学研究所 教授の松尾保孝氏、東北大学発のスタートアップ企業であるAZUL Energyらのグループが行った。
今回の研究では、AIを活用した大規模データ解析により、CO2からCO(一酸化炭素)への電気化学的変換を触媒する候補物質を探索。220種類の中から、青色顔料のCoPcを選定した。
炭素粒子表面で多層構造を形成したCoPc結晶の触媒は、−595mA/cm2の高い電流密度と6537A/gの優れた質量活性を達成し、90%以上のCO反応選択性を100時間以上維持した。CO変換の最大電流密度と触媒回転頻度、安定性、質量活性、変換効率の各観点で、従来の金属錯体触媒を上回った。
今回の技術は、安価な顔料触媒を使用して低コストに合成燃料の中間体であるCOを高効率に合成できるプロセス開発につながる。次世代のCO2有効活用技術として期待できる。
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