業務効率を10倍に改善、AIエージェントを使うためにリーダー層に必要なモノ:製造ITニュース
あらゆる業務でAIエージェントの活用が進む中、使いこなすためには何が必要になるのだろうか。Snowflakeは2025年9月11〜12日、ユーザーイベント「SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO 2025」を開催し、報道向けセッションでSnowflake CEOのスリダール・ラマスワミ氏らがAIエージェントの展望について語った。
Snowflakeは2025年9月11〜12日、ユーザーイベント「SNOWFLAKE WORLD TOUR TOKYO 2025」を開催した。同年9月11日には、報道向けラウンドテーブルとしてエージェンティックAI(AIエージェント)の現状と今後の展望について、Snowflake CEOのSridhar Ramaswamy(スリダール・ラマスワミ)氏らが語った。

左からSnowflake(日本法人)社長執行役員の浮田竜路氏、Snowflake CEO Sridhar Ramaswamy(スリダール・ラマスワミ)氏、Snowflake プロダクトEVP Christian Kleinerman(クリスチャン・クレイナマン)氏
エージェンティックAIがもたらす変化
Snowflake CEOのラマスワミ氏は「Snowflakeは現在、エンタープライズAI革命の中心にいる」と強調する。ラマスワミ氏は、AIエージェントの進化について「第1世代では自然言語で質問できるインタフェースが生まれたが、次世代ではAIがツールを活用して自律的に業務を遂行できるようになる。ツールへのアクセスを実現し、いつ使うのかを決めることができ、業務を丸ごと遂行できるようになる」と説明する。
そのため、AIエージェントの導入は、単なる業務効率化ではなく、企業構造そのものを変える可能性がある。「CEOも含めて一般的な企業業務のほとんどは、データを受け取り、理解し、処理するということで成り立っている。AIエージェントはこれを部分的に代行できる。一般的な業務改善は10%程度の単位で行われているが、AIエージェントを使えば10倍に高めることができる。これまでとは次元の違う改善が進む」とラマスワミ氏は語る。
この価値を享受するためには、リーダー層の覚悟が必要だとラマスワミ氏は訴える。「既にこうしたインパクトは出始めている。その中で何をAIエージェントにやらせて、何を人がやるのかについて、リーダー層は判断していく必要がある。AIエージェントを生かすためにはどういう業務のやり方がよいのかを考えて、既存の業務内容や手法を変化させていく必要がある」(ラマスワミ氏)。
ただ、こうした変革は慎重に進めるべきだともラマスワミ氏は主張する。「リーダー層は働く人々の心情なども考える必要がある。現場の人数を劇的に減らすような変革は求められていない。経営側の観点でコスト削減だけでは語ることはできない。現場も含めた全体的なメリットをどう位置付けるかを考え、理解してもらえるようにすることが重要だ」とラマスワミ氏は述べている。
エージェンティックAIへのSnowflakeの対応
Snowflakeでは、これらをAIエージェントによる変革を支援するための準備を進めてきている。SnowflakeはもともとAIデータクラウドとしてデータの運用を改善するデータ基盤構築が特徴となっていた。データの保管と処理を分け、データについてはさまざまな種類のデータを収納しつつ、これらに対しまとめて処理を行える。そのため、多様なデータを集めながら、総合的な判断を支援する企業のデータ基盤として採用が進められてきた。さらに2025年に発表された「Snowflake Intelligence」では、構造化データや非構造化データの両方を対象として問い合わせ可能なインタフェースを提供するなど、改善を進めてきている。
また、Snowflakeでは、生成AI活用において、構造化データを安全に管理する仕組みを提供し、OpenAIやAnthropic、Googleなどと連携して最先端モデルを活用する。国内ではNTTドコモや富士フイルムなど多くの企業と協力し、業界横断でのデータ連携を推進している。プロダクトEVPのクレイナマン氏は「Snowflakeはデータのライフサイクル全体を支援することを目指している」と述べ、これらを体現するものとして、AIを活用したデータと組織のサイロ化解消やレガシーシステム移行を挙げる。
一方、AIの進化が進むにつれ、世界各国でのAI規制などにも注目が集まるが、ラマスワミ氏は「新しい技術は既存法で対応できる部分と新しい枠組みが必要な部分がある」と述べる。「例えば、米国では全ての規制は悪いものだと考えがちだ。一方、欧州では新しい技術が出るとまず規制を作ることを考え、規制は必要なものだと考えがちだ。この両方の考え方が極端なものだ。新しい技術が出たときに考えるべきなのは、既存の法律や規制でカバーできるのかどうかということだ。既存の仕組みで問題がなければ新たな規制は必要ない。既存の仕組みでカバーできない領域のみに新たな規制を用意するという順番で進めるべきだ」とラマスワミ氏は考えを述べた。
ラマスワミ氏は「AIは可能性あるテクノロジーだが、悪用されないように設計しなければならない」と述べ、SnowflakeではAIシステムの評価可能なフレームワークを取り入れているという。そして、医療や金融など高い精度が求められる領域での責任ある実装を訴えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
サッポロHD、Snowflakeなどで構築したデータ利活用基盤システムの本格運用開始
サッポロホールディングスは、社内外のデータを効率的に集約かつ可視化し、利活用するための基盤システム「SAPPORO DATA FACTORY」の本格的な運用を開始した。AIはSCMシステムに何をもたらすのか
サプライチェーンの問題に多くの製造業が振り回される中、SCMシステムでもさらなる進化が求められている。そのカギを握るポイントの1つであるAIについて、Blue Yonder 最高イノベーション責任者のアンドレア・モーガン-ヴァンドーム氏に話を聞いた。日本版データスペース「ウラノス・エコシステム」が目指す欧米の良いとこ取り
「CEATEC JAPAN 2024」において、IPA 理事長 兼 DADC センター長の齊藤裕氏が「『ウラノス・エコシステム』が実現する業界や国境を超えたデータ活用の将来像とは」をテーマに講演を行った。SDVの潮流に自動車業界は対応できるのか、AWSは「3つの道具」で支援
AWSジャパンが自動車業界で注目を集めるSDVの潮流や、SDVの浸透によって変わりつつあるツール環境や仮想ECU、コネクテッド基盤の動向について説明した。製造業のAI活用は本番使用は約1割にとどまる、4割が「自社の知」との融合重視
キャディは、製造業のAI活用の課題と展望に関する調査結果を発表した。自社の経験やノウハウ、データとAIとの融合を重視している割合は4割に達している。PLMとは何か? 〜その意義と必要性〜
本連載では、製造業の競争力の維持/強化に欠かせないPLMに焦点を当て、データ活用の課題を整理しながら、コンセプトとしてのPLM実現に向けたアプローチを解説する。第1回は「PLMとは何か?」をテーマに、その意義と必要性を考える。