製造業のAI活用は本番使用は約1割にとどまる、4割が「自社の知」との融合重視:製造ITニュース
キャディは、製造業のAI活用の課題と展望に関する調査結果を発表した。自社の経験やノウハウ、データとAIとの融合を重視している割合は4割に達している。
キャディは2025年7月23日、製造業のAI(人工知能)活用の課題と展望に関する調査結果を発表した。同年6月20〜27日に実施したもので、製造業に従事する1227人を対象としている。AIの導入に対する期待が高まる一方で、実際の活用が限定的である現状と、企業が抱える構造的課題が浮き彫りとなった。
製造業が直面する最大の課題としては「人材不足、技能継承」が46.9%と圧倒的に多く、これに「原材料、エネルギーコストの高騰」(28.2%)、「生産設備の老朽化」(19.8%)が続いた。製造業の成長戦略として有効と考えられるものでは、「高付加価値の素材、製品開発」(14.1%)や「人材教育、リスキリング」(12.0%)が挙がっている。経営層や管理職では、11%が「AI技術の本格活用」を選択した。
非効率と感じる業務プロセスでは、「在庫、倉庫、出荷管理」「生産現場の段取り替え、セットアップ」「月次レポート、経理、原価計」がそれぞれ約2割を占める。AI活用の価値が高いと思う領域では、「コスト最適化、業務効率化」(30.1%)が最多。次いで「現場オペレーションの自動化、省人化」(26.6%)「品質向上、不良削減」(23.0%)となった。
注目すべきは、AI活用にあたり、4割が「自社の経験、ノウハウ、データと組み合わせること」を重視していると回答した点だ。「重視していない」とした回答(12.6%)を大きく上回っており、AIによる競争力強化には「自社の知」の活用が不可欠との認識が広がっていることがうかがえる。
実際に、本番環境でAIを活用している企業は9.9%にとどまった。一方で、「検討中だが未定」(19.4%)、「全く検討していない」(16.0%)は4割近くを占める。導入済みの企業でも、多くは「データ統合、活用」にとどまっており、「品質、リスク管理」や「オペレーション効率化」への展開が今後の課題となっている。
AIの拡大活用に向けた最大の障壁は「AI人材、スキル不足」(27.3%)であり、「データ収集、整備の不足」(13.9%)や「法規制、セキュリティへの懸念」(11.3%)も上位に挙がった。専門性の高いAI技術と、現場理解を両立した人材の育成が急務となっている。
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