家電の管理が1台のスマホアプリで完結 三菱電機のIoTソリューション:製造業IoT
三菱電機が「暮らしと設備のソリューション展 2025」を報道陣に公開。本稿では同社の家電統合アプリケーション「MyMU」を中心としたIoTソリューションを紹介する。
三菱電機は2025年8月26日、家電/設備製品の法人向けプライベート展示会「暮らしと設備のソリューション展 2025」(同月27〜28日、東京ビッグサイト)を報道陣に公開した。本稿では同社が提供している家電統合アプリケーションである「MyMU(マイエムユー)」を中心としたIoT(モノのインターネット)ソリューションを紹介する。
同展は、法人向けプライベート展示会として2年ぶりに開催され、今回は名称を「ソリューション展」へ変更した。三菱電機 執行役員 リビング・デジタルメディア事業本部 副事業本部長の小野達生氏「快適で安全安心な環境を創造するソリューションプロバイダーを目指す三菱の取り組みを紹介するために、3つのソリューションブースを新設した」と語る。
1台のスマートフォンで三菱家電を全て操作 MyMUの活用事例
MyMUは、三菱電機のクラウド共通プラットフォーム「Linova(リノバ)」をベースに、三菱電機のIoT機器を操作できるスマートフォン向け家電統合アプリケーションとして、2020年11月に登場した。1台のスマートフォンで屋外からでも複数の家電を同時に操作でき、他の家電との連携も可能である。帰宅のタイミングに合わせてエアコンの起動や浴槽への湯張りなどのシーン設定機能も備えている。
住宅用IoTソリューションコーナーでは、MyMUと家電をつないで体験できる幾つかのブースが用意されていた。「IoTのあるくらし」ブースでは、三菱電機エアコンに搭載されているサーモパイルセンサー「ムーブアイ」とMyMUを活用した体験ができた。MyMUでムーブアイによる部屋の熱画像を確認した上で、部屋内の温度を下げたい箇所に冷風を送れるようにエアコンのフラップを操作することができる。
「空気のおすそわけ」ブースでは、「Good Share!(グッシェア)」システムの体験展示があった。「エアコンのない部屋との温度差による不快感」を解決するために開発されたグッシェアは、エアコンを設置しているリビングルームからエアコンのない部屋にダクトを伸ばして空気を送ることで温度差を解消できることが特徴で、2024年度省エネ大賞(資源エネルギー庁長官賞)を受賞した。
また、ムーブアイによる床温度計測や気象情報を活用したクラウド制御との連携で、エアコン停止時でも部屋の快適性を確保できる。全館空調と比較した場合、施工コストを大幅に削減できるとともに、電力などのランニングコストを約半分に抑えられるとしている。
「浴室の快適&節電」ブースでは、冬場のリビングルームと脱衣室、浴室の温度差による不快感を解決する「あったかリンク」システムを展示していた。MyMUで給湯器の湯張りボタンを押すだけで、脱衣室と浴室が暖まるように脱衣室の乾燥機と浴室乾燥機を同時に作動できる。「高効率の給湯器であるエコキュートは、2025年モデルから全機種に無線LANを内蔵して基本的にIoTを実現できる状態を作っていく。これにより今後もMyMUを活用した新たなソリューションを生み出していける」(三菱電機の担当者)という。
住宅管理者向けの新たなIoTシステム「AMANOHARA」
住戸に設置されているIoT機器の管理/運用を効率化するシステム「AMANOHARA」は、住宅デベロッパー/メーカー、賃貸管理会社向けのサービスで2025年8月21日に提供を開始している。故障の早期発見や機器データを管理したいという要望を基に開発され、住宅管理者用の物件管理Webサービスと施工業者用にMyMUのアカウントを発行する機能を組み合わせたサービスとして提供している。複数の住宅に配置してある機器データを一括集約して閲覧/管理ができ、故障や不具合の兆候をリアルタイムで把握し、異常を早期発見できる。施工業者は発行されたMyMUのアカウントを使って、入居者が入居する前にIoT機器のインターネット接続や設定作業を実施できる。従来は、入居者自身がこれらの作業を行う必要があり、大きな負担になっていた。
政府が進めているGX(グリーントランスフォーメーション)政策において、住宅分野では遠隔操作/自動化による省エネ性などの向上が期待されているスマートホームや高断熱/高効率設備による省エネと太陽光発電などの創エネルギーを組み合わせ、エネルギー消費量の収支をゼロ以下にすることを目指したZEH(ネットゼロエネルギーハウス)の普及が求められている。AMANOHARAをはじめとした住宅用IoTソリューションは、スマートホームやZEHの普及を支援することで、三菱電機が目指す「循環型デジタル/エンジニアリング」の推進に貢献する狙いがある。
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