プログラマブルロジック市場を創り出した「PAL」は逆転のひらめきから生まれた:プログラマブルロジック本紀(2)(3/3 ページ)
FPGAに代表されるプログラマブルロジックICの歴史をたどる本連載。第2回は、プログラマブルロジック市場が創り出したPAL」と、PALの欠点を改良したGALについて紹介する。
PALの欠点を改良したGAL
ちなみにBirkner氏はAMDによるMMIの買収が行われる数年前に同社を離職。コンサルタントとしてActelをはじめとする幾つかの会社と協力して働いていた。その後、AMDによる買収に伴いMMIを辞めたChua氏やChan氏と合流し、新しい会社を興すことを決めた。
これがQuickLogicで、Birkner氏はCTOを務めた。同社は現在もまだ存在するが、同氏はQuickLogicがIPO(新規株式公開)を果たした後の2002年に離職。またコンサルタントとして働いた後で、Xilinxでシニアディレクターを務めていたKapil Shankar氏に請われて同社に入社し、Distinguished Engineer(卓越した技術力を持つ最高峰のエンジニア)という肩書でSpartanの製品ラインの開発に携わることになる。
ただ、Shankar氏は2005年にXilinxを離職してSiliconBlue Technologiesという別のFPGAの会社を設立し、Birkner氏もこれに付いていった。ちなみにそのSiliconBlueにはChua氏やChan氏も一緒に付いていっており、MMI以来3度目のチームということになる。その後SiliconBlueはLattice Semiconductorに買収され、ここでチームは完全にばらばらになった。Birkner氏はSiliconBlueに買収後はLatticeに11カ月だけ在籍した後で2社ほど渡り歩き、現在はMicrochip TechnologyでSeniorTechnical Staffとなっている。Shankar氏は最終的に古巣のXilinxに戻り、2022年まで在籍していたことは判明している。Chua氏やChan氏の行方は不明だ。
PALの話に戻そう。MMIがAMDに買収されたとはいえ、この時点で複数のメーカーからセカンドソースの形でPALが多数出荷されており、もう業界標準デバイスとなっていたことは間違いなく、この後GAL(Generic Array Logic)によって置き換えられていくまで長く利用されることになった。
そのPALを置き換えたGALとは何か? という話だが、PALの欠点はAND ArrayがOTP(One Time Programmable)、つまりヒューズの切断によるプログラミングを採用していたので、一度プログラムするともう書き直しが出来ないことだった。そこでProgrammable AND Arrayに、OTPではなくEEPROMを利用することで書き直しを可能にしたのがGALである。
厳密に言えばGALというのはLattice Semiconductorが出していた製品名であり、同種のものをAMDはPALCE、ICT(International CMOS Technology:1991年にチャプター11入りして破産した)はPEELと称していたが、いずれもCMOSベースでしかもEEPROMを利用してProgrammable AND Arrayの再プログラミングが可能という点では共通である。AMDはPALやPALCEを扱っていた部門を最終的にVantisという別会社にしてスピンアウトさせるが、そのVantisはLattice Semiconductorに買収されてしまった。
そしてICTが破産したことでGALの供給はLattice Semiconductorに集約された格好だが、同社自身はもうGALの供給は行っていない。ただし、そのLattice Semiconductorからセカンドソース契約を結んだAtmel(を買収したMicrochip)がまだGALの供給を続けているのはさすがである。例えば、GALとして広く利用されてきたGAL22V10は、ATF22V10CとしてMicrochipのWebサイトで現在もオーダー可能である(図6)。
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