プログラマブルロジックの誕生――CPLD前史:プログラマブルロジック本紀(1)(1/3 ページ)
FPGAに代表されるプログラマブルロジックICの歴史をたどる本連載。第1回は、プログラマブルロジックが誕生した1970年代の状況や、PLDのご先祖様となるPLAについて紹介する。【訂正あり】
EETimes Japanに以下のような記事が掲載されている。
本記事によれば、Xilinxは1984年に初のFPGA(Field Programmable Gate Array)であるXC2064をアナウンスしたが、実際に製品が出荷されたのは1985年のことであり、それもあって2025年を“FPGA40周年”と位置付けている。実を言えば、確かにFPGAに関してはXilinxが先行したが、CPLD(Complex Programmable Logic Device)に関して言えば1983年に創業したAlteraが1984年に出荷したEP300の方が先行しているし、もっと言えばその前にもさまざまなメーカーがPLD(Programmable Logic Device)マーケットに色んな製品をリリースしており、これらが最終的にFPGAに向けて収束していった……かと思いきや、2024年10月にTIが小容量PLDマーケットに参入したりするなど、まだまだCPLDも現役だったりする。
MONOistでも、例えば2010年1月から「FPGA Watch」が連載されていたり、「いまさら聞けない FPGA入門」や「新・いまさら聞けないFPGA入門」といった入門記事があったりするので、これらをお読みになった読者もおられると思う。ただ、もう少し全般的に包括する形でプログラマブルロジックの進展を時系列に沿う形で追っていきたいと思う。というわけで、本連載「プログラマブルロジック本紀」の第1回はCPLD登場以前についてご紹介したい。
TTL ICでロジックを組んでいた1970年代
ということで、1970年代まで話が戻る。時期から言えば、ハードウェアをバイポーラトランジスタで構成されるTTL(Transistor-Transistor Logic) ICを組み合わせて設計していた時代だ(それ以前だとRTL:Register-Transistor Logicなんかもあったりしたが、さすがに1970年代に入るとTTL一色である)。入出力周りや電源などのアナログ部分に関しては引き続きトランジスタやFETが幅を利かせていたが、ロジック部分は完全にデジタルで設計が行えた時代である。デジタル、というのは要するにTTL ICを使って構築できるというか構築するという話で、厳密に言えばTTLといっても1970年代に入るともう中身はCMOSながら動作条件をTTLに合わせたシリーズなどが結構出回っていたが、説明の都合上ここではTTLとして説明する。
TTL ICのスタンダードといえばTIのSN7400シリーズが最も代表的といえるだろう。ちなみに同種のもので5400/6400/8400シリーズもあったが、以下のような商品構成になっていた。
- 5400:ミリタリーグレード(−55〜125℃)
- 6400:産業向け(−40〜85℃)
- 7400:民生向け(0〜70℃)
- 8400:産業向け(−20〜85℃)
つまり、特に過酷な現場向けでない限り、一番安価で入手性も高い7400シリーズが利用された。そこで、7400シリーズを組み合わせて回路を構築していくわけだが、この数がまた多かった。Wikipediaの“List of 7400-series integrated circuits”を見ると、1428種類ものICが並んでいる。1970年代末はもっと種類は少なかったとは思うが、それでも数百種類はあった記憶がある。今ならデータシートをPDFの形で簡単にダウンロードできるだろうが、何しろインターネットがない時代である。どうするかというと、TIからデータシートを入手するか、もしくは当時CQ出版社から毎年発売されていた“規格表”(図1)を参照するかだった。
規格表の方は、最新版かどうかはともかくとしても、たいていの開発の現場には置かれており、なのでこれを見ながらどうTTL ICを組み合わせて目的の回路を作るかを考えるわけである。ただし、規格表に載っていればすぐに入手できる、とは限らないのは今も似たようなものだが、よく使う定番品はともかくちょっと珍しいものだと通販(1980年代は結構電子パーツを通販してくれる店があった)や商社などでも在庫がなかったりした。もちろん、これらを発注して届くまで待っていられる程のゆとりがあればいいのだが、そんな話はないので結局何かしら自前で捻り出す必要がある。
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