コイルを用いた実験回路で微分積分の本質に迫る【積分編】:今岡通博の俺流!組み込み用語解説(18)(1/2 ページ)
今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第18回は、コイルを用いた実験回路を使って積分の本質に迫る。
はじめに
今回は、前回の微分編に引き続きコイルを用いて積分を考察してみます。前回同様数式は一切出てきませんので、数学が苦手な方もお気軽に目を通していただければ幸いです。
コイルで積分ができるわけ
コイル(インダクター)の積分作用は、まるで「流れてきた電気の量を時間とともに記録していく貯水池」のような働きだと考えると分かりやすいでしょう。
コイルの「流れをためる」性質
コイルは、電気を流すと磁石のような性質を持ちます。そして、コイルには「電流が変化するのを嫌い、今の状態を維持しようとする」という特性があります。しかし、この「嫌がる」という性質の裏返しとして、「流れてきた電圧の強さと時間の積算に応じて、内部に流れる電流を徐々に増やしていく(または減らしていく)」という働きがあるのです。
「電圧の積み重ね」と電流の関係
以下の状況をイメージしてみてください。
電圧をかけると、電流が徐々に増える
コイルに電圧をかけると、その電圧がコイルを流れる電流を押し上げようとします。しかし、コイルは「急に増えるなよ!」と抵抗するので、電流は一気に増えるのではなく、徐々に、ゆっくりと増え始めます。
このとき、コイルに大きな電圧を長くかけ続けるほど、コイルの中に流れる電流はどんどん増えていきます。
電圧をゼロにすると、電流が徐々に減る
逆に、コイルにかかる電圧をゼロにしても、コイルは「急に減るなよ!」と抵抗します。そのため、それまで流れていた電流はすぐにゼロになるのではなく、ゆっくりと減っていきます。
つまり、コイルは「どれくらいの強さの電圧が、どれくらいの時間かかってきたか」という、電圧の「積み重ね」を記憶し、それを自分の中に流れる「電流の量」として表現するのです。
積分作用の具体的なイメージ
数学の「積分」は、ある時間の範囲で、その瞬間の値を全て合計していく作業です。コイルがやっていることもこれに似ています。
- 入力:電圧の強さ
- 出力:蓄積された電流の総量
例えば、一定の強さの電圧をコイルにかけ続けると、流れる電流は一定の速さで増え続けます。この電流の増え方は、かけ続けた電圧の「合計時間」に比例します。
もし、電圧の強さが途中で変わっても、コイルはそれぞれの時点での電圧を「足し合わせる」かのように、電流の増え方を調整します。結果として出てくる電流は『入力された電圧の「時間的な累積量」』を示している、と考えることができます。
このように、コイルの積分作用とは、入力された電圧の「強さ」と「時間」を累積し、その総量を流れる電流の「量」として表す働きのことです。電流がどれだけ流れているかを見ることで、「これまでにどれだけの電圧がかけられてきたか」を知ることができる、というわけです。
積分の実験回路
図1はコイルを使って積分の動作を確かめる回路です。
入力(IN)と出力(OUT)の間に直列にコイル(L)が入っています。そして抵抗(R)は出力と並列にグランドに落としています。
図2は上記の回路図を実装した実験環境です。
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