ナノ細孔を利用し、異種モノマーを自動で仕分けて並べて重合する新技術:研究開発の最前線
東京大学は、金属有機構造体(MOF)のナノ細孔を利用して、異なる種類のモノマーを自動で仕分けて、並べて、単独で重合させる新技術「マルチタスク型ポリマー合成法」を開発した。
東京大学は2025年8月5日、金属有機構造体(MOF)のナノ細孔を利用して、異なる種類のモノマーを自動で仕分けて、並べて、単独で重合させる新技術「マルチタスク型ポリマー合成法」を開発したと発表した。
研究チームは、性質の異なる2種類の一次元ナノチャネル(細孔)を持つMOFに、2種類のモノマーが混ざった混合液を導入。MOFの細孔それぞれが特定のサイズや性質を持った分子を選択的に吸蔵することから、細孔内で分子が自動的に仕分けされて一列に並び、独立して重合が進んだ。これにより複数のモノマーの混合液から、純成分のホモポリマー2種類を単工程で合成することに成功した。
合成したホモポリマーは、MOFを分解して取り出すこともできる。MOFの細孔構造が鋳型の役割を果たし、それぞれのホモポリマーが直線状となって交互に整列する構造(交互配列構造)を形成することも分かった。さらに、MOF内の「つなぎ役」となる架橋分子を介してポリマー同士を架橋させることで、MOFを除去した後もアレイ構造を安定に保持できることも実証した。
従来、異種モノマー混合物を一般的なフラスコ反応法で重合させると、モノマーが混ざって結合したコポリマーが生成する。しかも生成したコポリマーは容器内で乱雑に絡み合い、混ざった状態になってしまっていた。
今回開発された合成法は、生体の分子選別や反応の分業化といった機能に着想を得たもので、分子の整列や複数反応の同時制御といった化学操作を可能にする。電子材料や分子デバイスといったポリマー構造の高度な制御を求められる分野などで、幅広い応用が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
180℃、常圧水素下で繊維強化プラスチックを分解できる固体触媒を開発
東京大学は、繊維強化プラスチックを分解できる固体触媒を開発した。180℃、常圧水素下で加水素分解でき、ビスフェノールAといった樹脂モノマーの回収に成功した。塗膜の抗菌効果を可視化する新たな評価系 院内感染を予防する材料開発で貢献
東京大学大学院と日本ペイントは塗膜の抗菌効果をリアルタイムで可視化する評価系を開発した。両面ゲートIGBTのスイッチング損失を最大62%低減、東京大学が新技術開発
東京大学 生産技術研究所は2020年12月7日、ゲート両面の動作タイミングを最適化することなどを通じて、両面ゲートIGBTのスイッチング損失を、片面ゲートIGBTと比較して最大62%低減することに成功したと発表。従来の100万倍高速でガラス基板にレーザー加工 次世代半導体に貢献
AGCは、東京大学 講師の伊藤佑介氏や特任助教の張艶明氏らとAGCの研究グループが、ガラスなどの透明材料を従来の100万倍の速度でレーザー加工できる新しい手法を発明したと発表した。ヒスイから新鉱物「アマテラス石」を発見、二面性を有する結晶構造を観察
東京大学物性研究所は、日本の国石「ヒスイ」から新鉱物を発見した。日本神話に登場する天照大神の名を冠して「アマテラス石(学名:Amaterasuite)」と命名された新鉱物は、単位胞内に異なる2つの構造要素を同時に含むことが分かった。