阪神・淡路大震災から30年、災害支援ロボコン「レスコン」の現在地:ロボットイベントレポート(4/4 ページ)
2025年8月9〜10日、神戸サンボーホール(兵庫県神戸市)で「レスキューロボットコンテスト2025」が開催された。今回は、災害支援のロボコンであるレスコンの初開催から25周年、そして阪神・淡路大震災から30年を迎える節目の年での開催となった
レスキューロボット工学大賞受賞チーム「レスキューやらまいか」
静岡大学ロボットファクトリーに所属する学生チーム「レスキューやらまいか」は、今回のレスコンで最高賞となる「レスキューロボット工学大賞」を獲得した。チーム名の「やらまいか」は静岡方言で「やってみよう」の意味。スローガンである「おかしなレスキュー」は、「お(思いやり)」「か(確実な)」「し(迅速な)」を掛け合わせたもので、その理念は機体設計やオペレーションの隅々にまで行き渡っていた。

レスキューロボット工学大賞を受賞した「レスキューやらまいか」のメンバーとロボット。ロボットは4台あり、右から1号機「フレンチクルーラー」、2号機「マシュマロ」、3号機「パフェ」、4号機「パンケーキ」[クリックで拡大]
レスコンは、競技ポイントを競うコンテストではない。事前審査の書類に記載されたレスキューのコンセプト、それに沿ったロボット製作、そして実際のオペレーティングが総合的に判断される。そのため、過去には競技で最高得点を獲得したにもかかわらず大賞を逃すチームもあった。
しかし「レスキューやらまいか」は、ファーストミッション306ポイント、ファイナルミッション297ポイントと競技を断トツの得点でクリアした上で、レスキューロボット工学大賞を受賞した。
レスキューやらまいかのロボットの技術的特徴を見ていこう。同チームは4台のロボットを役割分担させ、効率的で安全な救助を実現した。
1号機「フレンチクルーラー」は、足回りがメカナムホイールで全方向移動ができる小型ロボットだ。役割は1階のがれき除去や移動経路の確保。ガス栓を閉めるなど細かな作業も行う。ロボットアームの先端は滑りにくく、手首が回転する。ガス栓の開閉動作は半自動化し、オペレーターの負担を減らしているそうだ。
2号機の「マシュマロ」は、カメラ付き小型アームで状況把握が容易になっており、がれき除去や救援物資の設置が行える。3号機の「パフェ」は1階からの救助/搬送を担当する。柔らかいハンドとオムニホイールでスムーズな搬送と容体保持性能に優れる。ダミヤンを優しく救助できるよう、救助用ロボットアームの中央は柔らかくしなる素材になっている。そして4号機の「パンケーキ」は2階からの救助/搬送を担当する。並行リンク機構とクッションタイヤで階段搬送時の揺れを吸収し、ダミヤンの体勢を安定保持できるようになっている。
ソフトウェア面では、複数ロボットを同時に操作できるUI(ユーザーインタフェース)、2次元コードの即時認識、ダミヤンの顔色や音声周波数の解析など、高度な容体判定機能を実装している。これらの機能により、救助活動の迅速化と正確性の向上を両立した。
競技においては、単に技術力だけでなく、全ロボットの連携を前提としたレスキュー方針の立案と柔軟な役割切り替えが光った。万一の故障時にも他の機体が代替できるよう、回路は小型化され、単独動作可能な設計に。これにより、トラブル発生時の影響を最小限に抑えたという。
審査員は受賞理由として「確実に動く」ためのシンプルかつ信頼性の高い機構選択と、「自分が救助される立場」を想定した設計を高く評価した。特に、搬送時の衝撃を最小限に抑える工夫や、ヘッドサポート/全身エアクッションによる安全性の確保は、競技用ロボットの枠を超え、実災害での適用可能性を示すものと高く評価された。
レスコンは次回の2026年も開催される。参加/観覧に興味のある方は、レスキューロボットコンテストの公式Webサイトを確認してほしい。
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