廃プリント基板の資源循環スキームで、パナソニックと三菱マテリアルが組む理由:素材/化学インタビュー(4/4 ページ)
パナソニックETソリューションズ 企画担当 CEエキスパートの田島章男氏と三菱マテリアル 金属事業カンパニー 資源循環事業部 事業開発部 企画室 室長の古賀沙織氏に、金属資源循環スキーム「PMPループ」の構築背景や概要と特徴、効果、採用事例、今後の展開について聞いた。【訂正あり】
PMPループの効果とは?
MONOist: PMPループの効果と採用事例について教えてください。
田島氏 PMPループは廃プリント基板を廃棄物として扱う場合と比べてCO2排出量の削減に貢献する。廃プリント基板を廃棄物として扱う場合は、埋め立てあるいはごみと一緒に焼却される。埋め立ては、CO2排出量はゼロだが、土壌汚染や処分場の逼迫(ひっぱく)につながる。ごみと一緒に焼却では、焼却で7万tのCO2が排出されるが、熱エネルギーを温水プールなどに使える。
PMPループは、基板焼却で7万tのCO2が排出されるが、それと同時に金属を回収できる。そのため、同量の銅を鉱石から生産する場合と比べて3万3000tのCO2排出量を減らせる。
田島氏 また、パナソニックグループでは、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」(会期:2025年4月13日〜10月13日)の同グループのパビリオン建設で、PMPループで回収した銅を基幹ケーブルに使った。具体的には、三菱マテリアルと住電HSTケーブルの協力のもと、パナソニックグループパビリオンで利用する主要幹線ケーブルに使う銅のほぼ全量(約1.2t)に、使用済み家電のプリント基板から回収した銅を原料としたリサイクル銅線を採用した。
古賀氏 三菱マテリアルでは、パナソニックグループとの連携により、安定的にE-Scrapを受け入れられるようになった。加えて、従来の買い取り形式ではなく、委託加工により所有権を保持しないことで、パナソニックグループが望むトレーサビリティーを実現し、顧客からの信頼を得ている。委託加工という新たなビジネスモデルを確立し、収益源の多様化にもつながっている。
MONOist: 今後の展開について教えてください。
田島氏 今後、PMPループでは、4家電からの廃プリント基板の循環だけでなく、小型家電や業務用機器の廃プリント基板の循環を目指す。さらにパナソニックグループでは、リサイクル工場などで活用できる自動分解ロボットの活用による、資源循環の高度化や資源のトレーサビリティーの検討を進めている。
古賀氏 三菱マテリアルでは、他企業とともに同様のスキームを構築し資源循環の構築を目指す。天然資源に乏しいわが国にとってE-Scrapは貴重な資源であるため、国内で発生する高品質なE-Scrapを優先的に処理し、PMPループを拡大していく。海外では資源の囲い込みの動きが強まる中、国内での地産地消型のリサイクル推進は、日本の経済安全保障の観点からも重要視されている。
さらに、当社では銅を中心とした当社のバリューチェーンの連携を強化することによって資源循環領域を広げるとともに、新たなプロセス開発によって資源循環の効率性を高め、競争力強化と事業拡大を早期に実現することを目指す。
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