手戻り大幅削減 材料開発期間を短縮するレゾナックパワーモジュールR&D拠点の共創:研究開発の最前線(2/2 ページ)
レゾナックは、小山事業所(栃木県小山市)内のパワーモジュール研究開発拠点「パワーモジュールインテグレーションセンター(PMiC)」で同拠点の説明会と見学会を行った。
PMiCのターゲット
畠山氏は「近年、BEV(電気自動車)の需要は減速しているが、今後も増加するという方向性自体は変わらないとみている。以前として、EVの高性能化を実現するために、パワーモジュールでは高出力化/高密度化を実現する材料が求められている」と述べた。
パワーモジュールの出力密度を向上させると、回路内で発生する熱量が急激に増える。そのため、パワーモジュールの最大動作温度を上げなければいけない他、材料では熱抵抗の低減や熱変化に対する耐久性などの熱マネジメントが必要となる。
そこでPMiCでは、パワーモジュールの開発方針として「熱抵抗の低減」「熱変化に対する耐久性」「電気絶縁性の維持」「製造プロセス改善」を掲げている。
「熱抵抗の低減」では、材料の熱抵抗を下げてパワーモジュールで生じる熱を逃がすことを、「熱変化に対する耐久性」では、温度の振れ幅により変形/劣化が起こらないような耐久性を目指している。
「電気絶縁性の維持」では、高温の環境下でも電気的な絶縁性を維持し短絡を防ぐことを、「製造プロセス改善」では性能を保ちつつ生産性を向上することを目標に据えている。
レゾナックはパワーモジュール関連材料として、シリコンカーバイド(SiC)エピタキシャルウエハーや耐熱性絶縁コーティング材、サーマルインタフェースマテリアル(TIM)材、アルミ冷却器、モールド用離型フィルム、焼結銅ペースト、耐熱封止材を扱っている。PMiCでは顧客のパワーモジュールへのニーズとこれらの材料特性を整理し、効率的なソリューションの提案と次世代品で要求される特性の明確化を狙っている。
同拠点では、レゾナックが保有している材料や設備により、さまざまなサイズの「トランスファーモールドタイプモジュール」「ケースタイプモジュール」「ディスクリート」などの試作が行える。そのため、研究開発しているパワーモジュール向け材料の工程能力検証や、パッケージ状態での性能評価、信頼性評価が可能だ。
さらに、パワーモジュール向け材料の放熱性や熱伝導率、静電気特性、動的電気特性、絶縁などの性能評価が行える。同材料のパワーサイクルや温度サイクル、高温逆バイアス試験、高温高湿保存試験、高温ゲートバイアス試験などにも対応し、信頼性評価が可能だ。「これらの評価機能とレゾナックが蓄積したノウハウにより、顧客と同等の評価が行える」(畠山氏)。シミュレーション能力も高いという。例えば、はんだタイプと焼結銅タイプのパワーモジュールの熱抵抗をシミュレーションした結果、実測に近い値を導出した。
PMiCの成果について一例を挙げると、高い熱伝導率(300[W/mK])と低熱膨張率(16.8[ppm])を有する高熱伝導性接合材料の焼結銅ペーストを開発した。「この焼結銅ペーストは、温度の上下を繰り返すパワーモジュールで、熱膨張による変形を抑えられ、信頼性が高い」(畠山氏)。
レゾナックでは今後、PMiCをパワーモジュールの技術ハブとし、製品開発の起点とするとともに、社内で構築したさまざまな技術と顧客をつなぐ場とする。畠山氏は「現時点で、PMiCの共創パートナー企業数は10社を超えている。共創パートナーは、材料や装置のメーカー、研究所などだ」とコメントした。
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