液晶生産で磨いたノウハウ注入、シャープの工場内搬送自動化支援:TECHNO-FRONTIER 2025
シャープは「TECHNO-FRONTIER 2025」において、物流の最適化を支援するロボティクスソリューションなどを紹介した。
シャープは「TECHNO-FRONTIER 2025」(会期:2025年7月23〜25日/会場:東京ビッグサイト)の構成展の1つである「第5回 スマート工場内の搬送系および協働ロボット利活用展」に出展し、物流の最適化を支援するロボティクスソリューションなどを紹介した。
幅700mmのスリム設計で両側の棚からケースを回収
シャープでは近年、液晶ディスプレイや太陽光発電パネルを生産する中で培った搬送の自動化ノウハウを、ロボティクスソリューションとして他社向けに展開している。
今回、展示したスリム型スタッカー自動搬送ロボットは、箱やケースごとに製品を運ぶことができ、幅700mmのスリムな設計で通路の両側の棚にアクセスできる。
把持したケースを一時収納するスペースがあり、一度に標準タイプで4個、拡張タイプで8個の搬送が可能だ。本体にはカメラが搭載されているため、搬送物の配置位置を高精度に検知して、移載部分のポジションを精密に調整する。
コンベヤーに代わって装置間を効率的に搬送できる他、従来人が作業を行っていた棚のまま導入できる。
1t(トン)までの重量物搬送を担う、リフトアップタイプのAGV(自動搬送ロボット)も展示した。棚ごと搬送するため、棚に収容できるものであれば形状に関係なく幅広く運べる。
シャープでは、搬送ロボットを制御する独自の集中制御システム「AOS」も手掛けている。AOSは最大500台を同時制御でき、エレベーターやPLC(プログラマブルロジックコントローラー)の他、上位システムとの連携も可能となっている。
シャープではこれら搬送ロボットを活用した工場自動化を支援している。現場課題/経営課題のヒアリングなどの調査から現状分析、プランニングを含めた構想企画の支援、PoC(概念実証)や量産環境構築の伴走などを行う。導入環境に合わせて、各種ロボットのカスタマイズも可能だ。
「もともと、さまざまなメーカーとやりとりしながら、自社工場の自動化を進めてきたメンバーたちがいる。そのため、自社製品が起点ではなく、工場全体の生産性を一番に考えて、自社や他社のロボットを組み合わせて最適なソリューションを提案できる」(シャープの説明員)
その他、無線デジタルピッキングシステムを展示した。同システムは、表示器のランプが光った棚から、表示された数だけ取り出すことで正確なピッキング作業を支援する。従来あったピッキングのリストや表示端末が要らないため、作業者は両手で確実に取り出せる。また、ピッキングする場所を探す時間も大幅に短縮する。
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