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ITER向けダイバータ外側垂直ターゲットのプロトタイプ完成:研究開発の最前線
日立製作所は量子科学技術研究開発機構と共同で、国際熱核融合実験炉ITERに用いるダイバータ外側垂直ターゲットのプロトタイプ2号機を完成させた。同試験体はITER機構による高熱負荷認証試験に合格した。
日立製作所は2025年7月23日、量子科学技術研究開発機構(QST)と共同で、国際熱核融合実験炉ITERに用いるダイバータ外側垂直ターゲットのプロトタイプ2号機を完成させたと発表した。同試験体はITER機構による高熱負荷認証試験に合格し、同社の製作技術が公式に認められた。
プロトタイプは、南フランスで建設中のITERで使用される炉内機器の中でも最も厳しい環境下で使用される重要部品だ。タングステンなどの難加工材を用い、0.5mm以下の高精度での組み立てが求められる。同社は原子力分野で培った溶接、非破壊検査技術を生かし、自動溶接システムを新たに開発。QSTが提供した材料を用い、品質管理のもと製作を行った。
ダイバータは、核融合炉内のプラズマから排出される不純物や燃え残りを除去する装置で、最大20MW/m2の熱負荷と約16.5トン(t)の電磁力に耐える必要がある。ITER計画では日本が同装置の主要部品開発を担っており、QSTが全58基を納入予定。そのうち18基は先行企業が製作、残る40基の製作体制は今後確定する。
今回の成果により、国内でのITER向けダイバータ製作体制が強化された。今後は、ITER計画への継続的な貢献に加え、原型炉やスタートアップ企業向け機器の提供も目指す。
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