交通空白解消を目指した心理的要因のシミュレーション技術を開発:モビリティサービス
富士通と名古屋大学は、交通空白解消を促進する新たな交通サービスの定着を図るため住民の心理的要因や選択をシミュレーションする「社会受容性モデルベースシミュレーション」を開発した。
富士通と名古屋大学は2025年7月24日、交通空白解消を促進する新たな交通サービスの定着を図るため住民の心理的要因や選択をシミュレーションする「社会受容性モデルベースシミュレーション」を開発したと発表した。
この技術は、名古屋大学が開発した「社会受容性モデル」と、富士通のエージェントシミュレーション技術を融合したものだ。前者は、交通行動に影響する心理的要因を推定し、後者は人々の行動をデジタルツイン上で高精度に再現・予測する。例えば広報活動などの利用者数を増加させるための手段が、住民の「便利そう」「使ってみたい」などの心理にどのような影響を与え、利用者数を向上させるかをシミュレーションして事前に予測できる。
この技術の効果を確認するため、2023年度に奈良県川西町と中央復建コンサルタンツが実施した予約型乗り合いタクシーサービスの実証実験の利用実績データを活用した。また、予約型乗り合いタクシーを利用するかどうかに影響を与える心理的要因を明らかにする48項目に及ぶ大規模アンケートを新たに実施し、住民の約15%(約1200人)から回答を得た。
得られたアンケートデータを用い、住民の予約型乗り合いタクシーサービスの選択行動を再現する「社会受容性モデルベースシミュレーション」のモデルを作成した。過去の実証実験の実績を使うことで、約90%の精度で住民の予約型乗り合いタクシーサービスの利用者数の推移を再現できることを確認した。
このシミュレーションを活用して、「サービスを認知すること」「有用性を感じること」といった利用意向に強い影響を与えると考えられる2つの心理的要因を重視し、「広報活動」と「台数を増やすサービス拡充」の2つの対策を広報予算と台数を制約条件として最適化した。このシミュレーションでは、予約成立の可否や広報活動の認知度が住民の利用意向にどのように影響するかを見た。その結果、広報時期や配布先、タクシー台数、増車時期の調整により、予約不成立を減少させ、利用意向を約20%向上できることが判明した。
両者は、今後も実証実験を継続し、2026年度をめどに小規模な住民アンケートのみで、新規交通サービスの定着を促進する対応策を得られる技術の開発を目指す。
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