リング状の培養筋組織により、しなやかな運動が可能な多関節ロボットを開発:医療技術ニュース
東京大学は、リング状の培養筋組織を用いて、連続的で力強い収縮や関節ごとのしなやかな運動が可能な多関節構造のバイオハイブリッドロボットを開発した。培養方法の改良とC型アンカーの導入により、大きく持続的に収縮できる。
東京大学は2025年7月17日、リング状の培養筋組織(筋肉リング)を用いて、連続的で力強い収縮や関節ごとのしなやかな運動が可能な多関節構造のバイオハイブリッドロボットを開発したと発表した。培養方法の改良とC型アンカーの導入により、従来は単収縮だった筋肉リングが、より大きく持続的に収縮できるようになった。
研究では、筋肉リング内の細胞同士の融合を高めるため、細胞と混合するハイドロゲルの割合を減少させた。同時に、培養の際に用いる柱構造の剛性を高めている。その結果、20Hzの高周波数の電気刺激で、筋組織が連続的に力強く動く強縮運動が可能になった。また、筋肉リングを保持するアンカーにC型構造を採用したことで、筋肉リングの収縮力を効率よくロボットの動きに伝え、関節ごとの駆動量の向上に成功した。

筋肉リングと収縮運動の様子。(A)筋肉リングの全体像。(B)筋肉リングに対して異なる電場周波数を印加した際に得られた収縮力。(C)筋肉リングとC型フックアンカーを統合したアクチュエーターに電気刺激を与えて駆動させているときの様子[クリックで拡大] 出所:東京大学
さらに、強化した筋肉リングを直列に複数連結して多関節構造としたところ、大きな屈曲動作が可能になった。この多関節構造のアクチュエーターを複数本用いて、グリッパ型のロボットを試作。筋肉リングの収縮運動により、グリッパが物体を把持できた。筋肉リングを利用した蛇型ロボットでは、3つの関節を連続的に駆動させて波打つように前進する動作を達成した。
筋肉リングは、培養筋組織の中でも安定的に作製しやすい。そのため、ロボットだけでなく、筋肉を対象とした薬物試験モデルとしても広く利用されてきた。筋肉リングの収縮力を向上させる同培養法は、バイオハイブリッドロボットへの応用のほか、医療、創薬分野における活用が期待される。
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