女性がカロリーを多く消費するメカニズムを解明:医療技術ニュース
東京科学大学は、マウスを用いた実験で、女性の体がカロリーを多く消費する理由を解明した。褐色脂肪組織のミトコンドリア機能の性差が、高いカロリー消費に関与していることが分かった。
東京科学大学は2025年7月14日、マウスを用いた実験により、女性の体がカロリーを多く消費する理由を解明したと発表した。褐色脂肪組織(BAT)のミトコンドリア機能の性差が、高いカロリー消費に関与していることが分かった。東京大学との共同研究による成果だ。
BATは、脂肪を燃やしてカロリーを消費する組織だ。BATの量が多いと糖尿病や心血管疾患のリスクが低く、肥満や関連疾患の予防と治療における有望なターゲットとなっている。
今回の研究では、BATの熱産生を調節するタンパク質PGC-1αがメスに特異的に作用することで、ミトコンドリアのリン脂質合成を促すことが分かった。これによりミトコンドリアの機能が向上し、高い熱産生機能とカロリー消費能が生じることが明らかとなった。
実験では、PGC-1αを除去したマウスのメスで、ミトコンドリアの形態変化や熱産生、カロリー消費の低下が認められた。また、転写因子Chrebpβなど脂肪合成に関連する遺伝子の発現低下もメスのみで確認された。ミトコンドリアの構造や機能保持に重要なリン脂質も、メスマウスでのみ減少した。一方、Chrebpβを抑制したメスマウスは、BATのカロリー消費能が低下した。
Chrebpβの転写調節にPGC-1αが関与する仕組みを解明するため、Chrebpβの転写開始部位近傍のクロマチンアクセシビリティーを評価した。PGC-1αは、メス特異的にChrebpβ遺伝子座のクロマチンを開いた状態に保つことで、Chrebpβの発現を促進していることが示された。なお、PGC-1αのノックアウトでこの性差は消失した。
さらに、メスマウスのBATでのみ、エストロゲンがChrebpβとその下流の脂肪合成に関連する遺伝子発現を増加させ、その作用がPGC-1αに依存していることも分かった。これらのことから、BATのミトコンドリア構造と機能には性差があること、その差異にPGC-1αが重要な役割を果たしていることが明らかになった。
他の臓器や組織でも、女性のミトコンドリアは男性より高いエネルギー産生能力を持つことが知られる。今後は、性差特異的な分子メカニズムの詳細について解明を進める。将来的には、カロリー消費を促進する治療法や薬剤の開発を目指す考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
人工甘味料が大腸炎を悪化させるメカニズムを解明
慶應義塾大学は、人工甘味料として広く使用される糖アルコールのソルビトール摂取により、腸内細菌叢およびその代謝物を介した腸管の炎症性免疫応答性が活性化し、大腸炎が悪化することを明らかにした。立ったまま寝る仮眠ボックスの販売を拡大
イトーキは、立ったまま寝る仮眠ボックス「giraffenap」の販売を開始した。同社が所有する、仮眠ボックスに関する開放特許「人体収納用構造体及び睡眠用筐体」を基に製品化したものとなる。オリンパスが内視鏡手術ロボット開発へ、米国で投資会社と新会社を設立
オリンパスは、エンドルミナルロボティクスの開発を加速するため、米国の医療業界特化の投資会社であるリバイバルと契約を締結したと発表した。両社は同契約に基づき、米国に新会社「スワン・エンドサージカル(Swan EndoSurgical)」を共同で設立する。リニューアルした血糖測定システムの販売を開始
テルモは、リニューアルした血糖測定システム「メディセーフフィットスマイル」の販売を開始した。操作フローや画面表示などを改良している。OKIとエフィニックスが提携 低電力FPGAを設計から量産までワンストップで提供へ
OKIとエフィニックスは業務提携を行い、FPGAの論理回路や搭載AI機器の設計から量産までをワンストップで受託するEMSサービスを展開すると発表した。カカオの有効成分がスポーツ時の判断力を向上させる
早稲田大学らは、カカオの有効成分ココアフラバノールを高用量含んだサプリメントを摂取することで、認知疲労下の運動中の判断力が向上することを明らかにした。