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撹拌動力計算とスケールアップ指標はじめての化学工学(9)(2/3 ページ)

前回は、撹拌の概念や装置について解説しました。今回は、撹拌槽の設計や運転条件を決める上で欠かせない撹拌動力計算と無次元指標、スケールアップの考え方について解説します。

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動力数の推算

 実験でNpを測定するにはトルク計が必要ですが、設計段階では測れません。そのため翼形状や邪魔板の有無などを変数にした経験式でNpを推算します。代表的なのが「永田の式」[参考文献1]と「亀井−平岡の式」[参考文献2]です。

 永田の式では邪魔板なしのパドル翼に対して動力数を直接求められます。翼幅と液深さの比(b/H)が1を超えない範囲で利用できます。

図4 永田の式。Np:動力数[-]、Re:撹拌レイノルズ数[-]、H:液深さ[m]、D:槽径[m]、b:翼幅[m]、d:翼径[m]
図4 永田の式。Np:動力数[-]、Re:撹拌レイノルズ数[-]、H:液深さ[m]、D:槽径[m]、b:翼幅[m]、d:翼径[m][クリックで拡大]

 永田の式は羽根枚数np=2、翼段数N=1での推算式です。採用する撹拌装置の羽根枚数や翼段数が異なる場合は、厚みのある2枚羽根1段パドル翼に修正して用います。

図5 翼条件の修正。b':修正した翼幅[m]、np:羽根枚数[-]、b:翼幅[m]、N:翼段数[-]
図5 翼条件の修正。b':修正した翼幅[m]、np:羽根枚数[-]、b:翼幅[m]、N:翼段数[-][クリックで拡大]

 亀井・平岡の式は、幅広いレイノルズ数や撹拌翼へ利用できます。永田の式よりも非常に複雑です。非常に長い式のため、ここでは割愛させて頂きます。基本式としてパドル翼で考案されました。その後、数々の撹拌翼に対して応用できることが分かりました。今日では、変数の値を変更することで、次に示すさまざまな条件に対して利用できる実験値が報告されています。

  • パドル翼、傾斜パドル翼(基本式)
  • タービン翼
  • プロペラ翼、三枚後退翼
  • スーパーミックスHR320、320S
  • アンカー翼
  • ヘリカルリボン翼
  • マックスブレンド
  • スーパーミックスMR205
  • フルゾーン
  • 球状タンク

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