日立の2025年度第1四半期業績は増収増益、米国関税影響は直接から間接へシフト:製造マネジメントニュース
日立製作所の2025年度第1四半期連結業績は前年同期比で増収増益を達成するなど好調だった。米国相互関税の影響については、関税コスト増による直接影響から、販売機会損失などの間接影響にシフトしつつあることを指摘した。
日立製作所(以下、日立)は2025年7月31日、オンラインで会見を開き、2025年度(2026年3月期)第1四半期(4〜6月期)の連結業績について説明した。売上高は前年同期比2%増の2兆2583億円、利益指標であるAdjusted EBITAは同6%増の2375億円、Adjusted EBITAは同0.4ポイント増の10.5%、四半期純利益は同10%増の1922億円で、為替や米国関税影響が一部あるもののエナジーセクターのパワーグリッド事業やモビリティセクターの鉄道事業が好調に推移し増収増益を達成した。Adjusted EBITAでは四半期ベースで過去最高となった。
2025年度第1四半期の連結業績で注目を集めたのが米国の相互関税の影響である。2025年4月の期初予想では2025年度年間の影響額としてAdjusted EBITAで300億円、当期利益で350億円を想定していたが、第1四半期の実績はAdjusted EBITAで25億円、当期利益で40億円にとどまった。
日立は、米国相互関税影響について、直接影響の関税コスト増と、間接影響の販売機会損失などを分けて対策を進めている。第1四半期は、部品/部材を欧州やカナダから輸入している日立エナジーを中心に価格転嫁や米国拠点への生産移行といった対策によって、直接影響による業績へのインパクトを抑制した。日立 執行役専務 CFOの加藤知巳氏は「ただし、デジタルシステム&サービス(DSS)セクターを中心に一部顧客の投資抑制が発生するなど、直接影響から間接影響にリスクがシフトしつつある」と語る。このため、米国相互関税の影響額は期初予想から変更せず、Adjusted EBITAで300億円、当期利益で350億円に据え置いた。
実際に、DSSセクターのサービス&プラットフォームセグメントにおいて、海外ストレージ事業で米国相互関税による欧米顧客の投資抑制の影響が出ている。ストレージ事業のミッドレンジ製品における価格競争の激化もあり、同セグメントの売上高は前年同期比14%減の2357億円にとどまった。「ストレージ事業については既にコスト削減などで手を打っており十分巻き返せる」(加藤氏)という。
2025年度通期の業績見通しは、売上高が前年度比3%増の10兆1000億円、Adjusted EBITAが同2%増の1兆1100億円、Adjusted EBITA率が同0.1ポイント減の11.0%、当期利益が同15%増の7100億円で期初予想を据え置いた。受注が好調に推移するエナジーセクターで売上高300億円、Adjusted EBITA320億円、モビリティセクターで売上高100億円、Adjusted EBITA10億円の上方修正を行い、DSSセクターとCI(コネクティブインダストリー)セクターは据え置いたが、全社および消去で事業悪化リスクを追加で織り込んだため、トータルとして期初予想から変更はない。
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