新車生産の厳しい環境続く、国内や米中で苦戦:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
2025年5月の日系自動車メーカーの生産は、前年割れが目立つメーカーが多く、8社の世界生産合計は4カ月ぶりに前年実績を下回った。国内生産が低迷した他、北米や中国もマイナスが相次いだ。中国での競争激化による販売低迷は依然として続いており、トランプ関税による影響も表面化し始めている。
スズキ
スズキの5月のグローバル生産は、前年同月比4.1%減の28万2422台と4カ月連続のマイナスだった。それでも2位のホンダも不調のため、その差は3836台と小差だった。伸び悩みの原因は国内生産で、同14.1%減の7万1458台と4カ月連続で減少した。欧州向け「ジムニー」や「イグニス」の生産を終了したことや、前年より稼働日が1日少ないことに加えて、中国によるレアアースの輸出規制の影響を受けて相良工場で「スイフト」の生産を停止したことが要因となった。輸出も生産を終了したイグニスやジムニーなど欧州向けの減少で同26.0%減と、5カ月連続で減少した。
海外生産は、前年同月比0.1%減の21万964台と微減で、4カ月ぶりにマイナスへ転じた。世界生産の7割弱を占めるインドは、SUVの販売好調や輸出の増加に加えて、24年4月のマネサール工場の新ライン稼働、25年2月にはブレッツァを生産するハリヤナ州のカルコダ工場の操業を開始した結果、同0.7%増と8カ月連続で増加。5月として過去最高を更新した。ただ、ハンガリーの減少などインド以外の海外生産は同8.8%減と27カ月連続で減少した。
日産自動車
8社の中で最も厳しい状況が続くのが日産だ。5月のグローバル生産は、前年同月比16.5%減の22万9645台と12カ月連続のマイナスだった。スズキとの差は大きく、8社の生産台数の順位では4位が定着してきた。このうち国内生産は、同16.8%減の4万892台と15カ月連続のマイナス。北米向けの主力車種である「エクストレイル/ローグ」の台数減が響いた他、国内販売でも「セレナ」「ノート」「エクストレイル」など主力モデルが軒並み大幅に台数を落とした。EV「リーフ」の新型車への切り替えも影響した。輸出もローグの不調などにより同30.3%減と低迷し、7カ月連続で前年実績を下回った。
海外生産も伸び悩み、前年同月比16.4%減の18万8753台と12カ月連続で前年実績を下回った。米国はリーフの生産終了などにより同23.6%減と13カ月連続のマイナス。ただ、メキシコは「キックス」の増加で同0.1%増と微増。3カ月ぶりに増加した。販売競争が厳しい中国はヴェヌーシアなどの減少で同23.6%減と低迷が続いており、12カ月連続のマイナス。英国もリーフの生産終了や「ジューク」の減少により同38.3%減と大きく減少し12カ月連続のマイナスだった。
ダイハツ工業
8社の中で世界生産が唯一2桁パーセント増となったのがダイハツだ。5月のグローバル生産は、前年同月比11.9%増の12万4064台と、6カ月連続のプラス。これは前年の国内生産が認証不正問題により大きく減少していたためで、国内生産は同64.6%増の6万3476台と5カ月連続で前年実績を上回った。内訳は軽自動車が同51.8%増の4万1091台、登録車に至っては同94.7%増の2万2385台と、5月として過去最高を更新した。
一方で海外生産は低迷しており、前年同月比16.2%減の6万588台と2カ月ぶりのマイナスだった。マレーシアが同6.7%減と2カ月ぶりに減少した他、インドネシアで厳しい状況が続いており、同25.1%減と大幅に落ち込み、22カ月連続のマイナスとなった。
マツダ
日産の次に厳しいのがマツダだ。5月のグローバル生産台数は、前年同月比10.0%減の8万5596台と4カ月連続で減少。月を追うごとに減少幅が拡大している。このうち主力の国内生産は、同8.8%減の5万620台と4カ月連続で前年実績を下回った。「マツダ3」は同15.2%増と増えたものの、前年が新型車効果で高水準だった北米など向け「CX-90」が同39.5%減と大きく減少した他、主力モデルの「CX-5」も同3.7%減と伸び悩んだ。
輸出も欧州向けは「CX-60」やマツダ3が増えたことで前年同月比41.3%増と伸長したが、CX-90の大幅減などにより同4.9%減にとどまった。5月は主要市場の米国販売が同18.6%減と低迷した。これはインセンティブを積み増して台数を確保した前年の反動減などが発生したという。
海外生産も大きく減少した。前年同月比11.7%減の3万4976台で、5カ月ぶりにマイナスへ転じた。中でもメキシコは「CX-30」やマツダ3の減少により同34.1%減と低迷。「CX-50」が堅調な米国は同14.6%増と伸長したが、北米トータルでは同18.0%減と2カ月連続の前年割れとなった。タイも輸出向けの「マツダ2」などが落ち込み同23.7%減と2カ月連続のマイナスだった。ただ、中国は新型EV「EZ-6」「マツダ6e」の純増により同34.8%増と大幅プラスで、2カ月連続で前年実績を上回った。
スバル
スバルの5月のグローバル生産は、前年同月比2.3%増の8万1382台と2カ月連続のプラスだった。このうち国内生産は、同3.0%増の4万7780台と4カ月連続の前年超え。新型「フォレスター」などが好調に推移している。これに伴い輸出も同1.3%増と4カ月連続でプラスを確保した。唯一の海外生産拠点である米国生産も、同1.3%増の3万3602台と7カ月ぶりにプラスへ転じた。
三菱自動車
三菱自の5月のグローバル生産台数は、前年同月比4.4%増の7万5350台と2カ月連続で前年実績を上回った。要因としては不調が続いていた海外生産が、同3.9%増の3万6138台と7カ月ぶりに増加へ転じたことが大きい。主要地域である東南アジアは、最大拠点を構えるタイは経済低迷やローン審査の厳格化などで厳しい市況が続いており、同6.8%減と減少した。一方、インドネシアは輸出向け「エクスパンダー」の好調などで同37.4%増と大幅増を記録。アジアトータルでも同2.7%増とプラスを確保した。
国内生産も、前年同月比4.8%増の3万9212台と3カ月連続で増加した。6月の国内販売を見ると、日産向けにOEM(相手先ブランドによる生産)供給するEV「サクラ」や「デイズ」などは低迷したものの、「デリカミニ」「デリカD:5」などの主力車種が大きく伸長し、国内生産を押し上げた。輸出も同10.6%増と2カ月ぶりのプラスとなり貢献した。
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