パナソニック コネクトに浸透する生成AI活用 前年比2.4倍の業務時間削減を達成:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
パナソニック コネクトが社内向け生成AI活用イベントを開催。2023年2月から始まった同社内における生成AIの業務利用だが、その活用法はAIに「聞く」から「頼む」に変わりつつあるという。
数カ月かかっていたツール開発の期間を4日に短縮
今回のイベントでは生成AIを活用している各部門の代表者が登壇して、自身が所属する部署で行っている事例について説明した。
パナソニック コネクトのDM(デザイン&マーケティング)本部では、マーケティングメールのコンテンツを部門間で自動で共有できるツールを作成した。これにより、別部門のメール内容を確認できるようになり、これまで情報共有にかけていた手間やコストを削減できた。こういった機能を実現するツールの開発は、従来であれば業務の合間に作業をしながら数カ月をかけていたが、社外に発注する場合には高額な見積もりになってしまう可能性がある。そこでConnectAIを活用し、実現したい機能などを自然言語によるプロンプト入力でコードを自動生成することで、構想から機能の正式リリースまで4日に短縮できた。
パナソニック コネクトのCE(カスタマーエクスペリエンス)センターでは、プログラミング作業において自動生成したコードや既存コードを見直して最適なコードに書き直すリファクタリングのプロセスで大きな業務効率化の効果が出ている。パナソニック コネクトはソフトウェアの開発生産性を従来比で10倍以上に向上することを目指している。そこでCEセンターは、ソフトウェア開発プラットフォームである「GitHub」のAIペアプログラミングツール「GitHub Copilot」と、プロジェクト管理ツール「Jira/Confluence」のAIアシスタントである「Atlassian ROVO」を組み合わせて、自然言語で指示するだけで開発フローや計画、ルールなどを自動で出力できるようにして業務を大幅に効率化した。
また、同社固有の質問にも回答できる「特化AI」も幅広い部門で活用されている。社内の膨大な量の文書から、高い精度で知りたい部分をピックアップしてConnectAIが回答してくれる。品質管理や経理、ITサポート部門では、社内基準について確認したいときや課題や困りごとが発生したときの相談役として質問したり、専門知識や社内用語について知りたいときに辞書代わりに使用したりしている。
生成AI活用のリスク
今回のイベントでは、生成AI活用のリスクについても触れられた。生成AIは生産性の向上などに役立つ反面、さまざまなリスクが発生する可能性がある。特に、機密情報や個人情報が漏えいする可能性があり、契約/法令違反リスクが潜んでいることを忘れてはいけない。その情報が本当に使っていいのか、顧客が絡む情報はきちんと同意を得ているかなど、AI活用をおこなう際に確認をしなければならない。日本のAIに関する法律/ルールは正確に定まっていない状態であるため、最新の情報を常に確認しながらリスクを容認した上で正しく利用することが大事になってくる。
イベントの最後には、パナソニック コネクト 執行役員 CIO IT・デジタル推進本部 マネージングダイレクターの河野明彦氏が登壇した。河野氏は「細かいことや日々の困りごとに対して、AIというツールを使って自ら解決していくことは非常に大切なことではないかと思う」と語り、社内のAI活用事例を知ることの重要性を伝え、今後も社内向けAI活用推進イベントを引き続き行っていく方針を示した。また、河野氏は「AIに限らずテクノロジーを使って自らの仕事を自らで変えていけるようにしていきたい」と述べている。
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