フッ化カリウムから無水フッ化水素を定量的に生成する手法 特別な設備は不要:研究開発の最前線
芝浦工業大学は、安全で安価なフッ化カリウム(KF)から無水フッ化水素(HF)を定量的に生成するオンデマンド合成法を開発した。特別な設備を必要とせず、必要な時に必要な場所で安全なKFから無水HFを生成できる。
芝浦工業大学は2025年7月4日、安全で安価なフッ化カリウム(KF)から無水フッ化水素(HF)を定量的に生成するオンデマンド合成法を開発したと発表した。特別な設備を必要とせず、必要な時に必要な場所で安全なKFから無水HFを生成できる。
研究チームは、アルカリ金属イオンとのカチオン交換能があるAmberlyst 15DRYに着目。KFとAmberlyst 15DRYのカチオン交換反応を利用して、アセトニトリル(MeCN)中でKFから無水HFの生成に成功した。KFはMeCNに難溶だが、カチオン交換反応によってKFの溶解が促進された。HFには毒性と腐食性があり、室温で気体であるため取り扱いが困難だが、この手法では特別な設備を必要とせず安全に取り扱える。
また、使用したAmberlyst 15DRYは再生可能で、繰り返し利用できることを確認した。さらに、カチオン交換反応で生成した無水HFに対して3分の1当量のアミンを加え、新規フッ素化剤として有望なAmine-3HF錯体のテーラーメイド合成に成功した。従来のOlah's試薬やEt3N-3HF錯体と比べて、より高い反応性が期待できる有機強塩基-3HF錯体などを自由に合成できるようになる。
医薬品、農薬、機能性材料など、さまざまな分野で利用される有機フッ素化合物は、天然にはほとんど存在しないため必要な分だけ合成しなければならない。HFは低コストなフッ素化剤だが、取り扱いが困難だ。一方、フッ化カリウムは安全で低コストで、取り扱いも簡単だが、多くの有機溶媒に難溶なことが課題だった。
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