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「有効作業分析法」を全社展開してモノづくりの変革にチャレンジ!現場改善を定量化する分析手法とは(14)(1/3 ページ)

工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第13回は、第11回から説明してきた「有効作業分析法」の最終回。工場での具体的な運用方法や実施例とその考察、全社展開に向けた課題などについて説明します。

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 連載第12回から「有効作業分析法」について説明してきましたが、3回目となる今回で最終回となります。無駄作業の排除は、以前より折に触れてよくいわれてきましたが、実は、無効作業の排除後の処理が適切に行われていなければ、経営面での成果は得られません。

 例えば、5人で行っている作業に対して有効作業分析法を適用し、20%の無効作業の排除を行った場合、5人作業が4人で作業が可能となったわけですから、当然のことながら4人作業としての作業を再設計しなければなりません。最終的には、作業全体の何%を削減し、コストがいくら低減できたかが最終結論となります。

⇒連載「現場改善を定量化する分析手法とは」バックナンバー

1.工場における「有効作業分析法」の具体的な運用方法

1.1 実際の運用時の主要な観点

 作業改善の着眼点の発見のための手法として、有効作業分析法の考え方とその手順を連載第13回の「有効作業分析法を実際に試して効果を実感してみよう!」で、説明しましたが、今回は工場における実際の運用方法について説明したいと思います。その主要な観点は以下の通りですが、組織全体の全社活動としての推進システムを作ることが、より成功につながっていくことは確かです。

  • 誰が主体となって作業改善を推進するのか
  • 有効作業分析手法の意識付けから始まり、改善への適用フォローまでの各ステップの役割や意義、期待する働きなどの明確化
  • 有効作業分析の精度と手間の兼合い
  • どの範囲と規模(係、課、部、工場全体)の活動か
  • 分析や改善などの手法の教育
  • 活動の推進状況のフォローアップ方法
  • 作業速度レーティング法、動画撮影の活用による動作分析法、その他の手法との併用について

1.2 推進主体と分析方法

 まず、推進の主体は当然のことながら製造部門です。個々の作業者の意識付けを含めた、どちらかといえば小規模改善の積み上げとして無効作業を削減し、生産職場ごとの作業効率を上げていくという活動の趣旨からいって、第一線の現場管理監督者が主体となるべきです。

 職場責任者である管理監督者がスタッフなどの協力を仰ぎながら、自分の職場内の改善を推進する原動力とならなければなりません。管理監督者が「有効作業分析」を行う場合は、実務との兼ね合いからあまり高精度で手間のかかる分析は結果的に実施されない場合が多く、実用的ではありません。

 この分析は、改善のポイントを見つけるための分析であって、有効作業率の値やその分析精度をあまり重要視すべきではありません。有効作業率の高低がその職場の良しあしの判断には必ずしも結び付きません。機械化された職場において、一般的に有効作業の方が機械化されやすいために有効作業率が低いこともあり、むしろどれだけ改善されたかを計る指標として考えた方がよいでしょう。

 また、作業時間の実測値も、「有効作業時間+無効作業時間=全体の作業時間」である方が実務的であるため、生産計画や作業配分の実務にそのまま使用しても差し支えありません。

(1)分析手順

 前回記事の「図2 有効作業分析のフローチャート」で説明した分析手順は、基本的な手順ですので、必ずしもその手順通りに進める必要はありません。現実的には、分析対象職場の有効作業率の状況や分析者の分析技量、分析に費やせる時間などを鑑み、分析レベルを選択して実施します。

(2)分析手法

 管理監督者に推進主体を置いた活動の場合の有効作業分析は、簡略化した手法で行います。その要点は、量産職場も含めて以下の通りです。

  • 片手動作、両手動作の区分補正はしない
  • 有効作業域を250mmに固定する
  • 時間測定はストップウォッチ法で行う

 また、表1に稼働時間内における有効作業/無効作業の定義、表2に簡略分析フォームを用いた有効作業/無効作業の分析例を示しました。

表1
表1 稼働時間内における有効作業/無効作業の定義[クリックで拡大]
表2
表2 簡略分析フォームを用いた有効作業/無効作業の分析例[クリックで拡大]

 以下に連載第12回の表1も再掲しておきます。この表は、一般的な職場の特徴と分析レベルを示したもので、管理監督者を推進主体とした場合の各分析手法の観点についても説明しておきます。

連載第12回の表1(再掲)
連載第12回の表1(再掲) 職場の特徴と分析レベル[クリックで拡大]

(a)簡易分析

 個人ごとに、有効作業域を定めて白線などで明確に区分し、この領域内外の作業時間をワークサンプリング法(連載『よくわかる「標準時間」のはなし』第9回を参照)で測定します。領域はマニュアルでは1.5mと規定していますが、対象によっては、多少大きくても小さくしてもかまいません。また、この領域は固定するものでなく、実力に応じて小さくする努力を払っていきます。

(b)一次有効作業分析〜三次有効作業分析

 簡易分析は有効作業域の内外の区分を判定するだけなので分析は容易ですが、一次有効作業分析以降の分析では、個々の無効作業を詳細に分析するために時間を要してしまいます。従って、分析の範囲を最大でも30分以内に絞ることが実務的です。また、「動画分析ミーティング」で作業者に動画を見てもらうときの所要時間は、集中力の持続性からいって極力短い方が効果的です。

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