富士通が語るAIエージェント戦略、“足の小指を打たない”データ活用の在り方とは:製造ITニュース(2/2 ページ)
富士通は「Fujitsu Uvance Update」として、クロスインダストリーで社会課題解決に貢献する事業モデルである「Uvance」の進捗状況について説明し、事例などを紹介した。
ADEKAとの共創でトランプ関税対策テンプレートを2週間で導入
さらにADEKAからの要望に応じ、関税の変動による損益影響および代替策を示すソリューションを2週間で導入したことも紹介した。米国のトランプ関税が日々変化する中で、関税のビジネスインパクトをすぐに把握し、対応を決めたいというニーズは高まっている。ADEKAでは、こうした影響を最小限に抑えるための仕組みを数カ月かけて構築してきたが、ADEKA 代表取締役社長兼社長執行役員の城詰秀尊氏は「富士通に相談したところ、数週間でソリューションを提示してきた」と語る。
化学品メーカーのADEKAでは、製品品番が数千種類あり、それらの製造に必要な材料まで含めると数万種類にも及ぶ。これらはさまざまな国のプラントで製造されているが、組み合わせまで踏まえると非常に複雑なオペレーションとなる。関税の変動による損益影響および代替策を示すソリューションでは、これらに関わる業務の関連性などを解き明かし、関税率などを入力したり外部のWebサイトから取り込んだりするだけで、すぐに業績へのインパクトが計算できる。
システム構築の手応えについて城詰氏は「今回、富士通と一緒に取り組んでみて、データ活用やAI活用への取り組みは“足の小指を打つ”のと同じだと感じた。人は足の小指の位置までを正確に把握できていないため、小指をぶつけることになる。正確に把握できていれば小指をぶつけることはないはずだ。これは企業経営も同じで、正確なデータ管理が行われておらず、業務の細部まで把握できていないためにさまざまなトラブルが生まれる。『正確なデータ』が重要だ」と語る。
富士通のAIエージェント戦略の3つの柱
富士通ではAIエージェントでの戦略として「業務特化型エージェント」「マルチエージェント化/マルチベンダー化」「信頼性の担保」の3つを推進している。
その中でも強みとなっているのが、業務特化型エージェントだ。業務特化型エージェントは、特定業界や特定業務に特化したAIエージェントであり、高度な専門知識を生かした意思決定支援や複雑な業務の自動化を実現できる。「企業の受託開発を請け負う富士通のノウハウがあるからこそ、それぞれの専門業務に特化したAIエージェントが開発できる。業務1つ1つを把握してそれに合わせることはハイパースケーラーにはできないことだ」と高橋氏は強みを訴えている。
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