設計開発の上流から共同作業しやすいクラウド環境提供 解析もスパコンで時間短縮:ものづくり ワールド[東京]2024
富士通は「日本ものづくりワールド 2024」に出展し、「Engineering Accelerator」などを展示した。
富士通は「日本ものづくりワールド 2024」(2024年6月19〜21日、東京ビッグサイト)内の「第2回 製造業DX展」に出展し、「Sustainable Manufacuring」をテーマに、モノづくりのプロセスを上流から下流までトータルで変革するためのソリューションなどを展示した。本稿では、その中から「Engineering Accelerator」の展示内容を紹介する。
低遅延でコラボレーションしやすい環境を
Engineering Acceleratorは富士通が注力するソリューション群「Fujitsu Uvance」の1つに位置付けられるソリューションで、設計開発におけるイノベーション創出やQCDE(質、コスト、納期、環境)を向上させるモノづくりの実現を支援する。設計開発分野で高まる、上流工程からの一貫したデータ管理や、企業内外でのコラボレーションなどのニーズに応えるソリューションとして提案する。
ユーザーに提供する価値としては、大きく分けて、情報の一元化を行う「デジタルスレッド」、属人性の高いスキルの可視化や標準化を行う「設計プロセスの可視化/自動化」、シミュレーション技術によって設計開発の手戻りを低減する「デジタルリハーサル」、クラウド設計/開発環境を提供する「クラウドエンジニアリング環境」の4つがある。設計/開発の上流から下流まで一気通貫のデータ管理を実現し、データやナレッジの活用を促進、シミュレーションやクラウドを活用して柔軟で効率的な設計開発環境を提案する。
クラウド環境はMicrosoft Azure上に設計/開発メンバーの共同ワークスペースを構築する形で提供する。モデルベース開発に必要なモデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)、モデルベースデザイン(MBD)のツールに加えて、CAEツールなどが利用できる。さらに、スーパーコンピュータ「PRIMEHPC FX1000」や「デジタルアニーラ」などの解析計算システムも、CaaS(Computing as a Service)の形式で提供する。製品設計/開発の一元的なプロジェクト管理も可能だ。
解析プロセスでスーパーコンピュータのリソースを活用できるのは、富士通ならではの強みだ。同社担当者は「CaaSを使うことで解析プロセスの時間を90%短縮できた事例もある」と語る。
ワークスペースにはメンバー間のコラボレーションを容易にするための技術も実装されている。その1つが、富士通が特許を取得した「高速リモートデスクトップ」だ。技術者同士が低遅延で設計/開発業務を共同で行うための仕組みを提供する。「作業時の遅延は設計のリモート化を阻む障壁の1つとなっていた。コロナ禍でも大変注目を集めた技術だ」(同担当者)。
現時点では航空業界などから相談が多く、今後は半導体や自動車業界などにも提案の幅を広げていく計画だという。
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