しゃべってなぞると翻訳、現場リーダーと外国人従業員の意思疎通促進ツール:ものづくり ワールド[東京]2025
三菱電機は、「第37回 ものづくり ワールド[東京]」に出展し、製造現場で日本人リーダーと外国人従業員とのコミュニケーションの促進を図る各種ツールを展示した。
三菱電機は、「第37回 ものづくり ワールド[東京]」(会期:2025年7月9〜11日/会場:幕張メッセ)の構成展の1つ「製造業DX展」に出展し、製造現場において日本人リーダーと外国人従業員とのコミュニケーションの促進を図る各種ツールを展示した。
意思疎通不足は現場の安全と品質にも影響、対応言語は40へ
人手不足が深刻な国内では、製造現場でも外国籍の従業員が増えており、その国籍も幅広くなっている。毎日の朝礼で現場のリーダーが日本語で注意事項などを伝えても、外国籍の従業員に十分に伝わらないこともあり、工場の安全や製品の品質にも影響する問題だ。
三菱電機が2025年4月から提供している「MelBridge 翻訳サイネージ」は英語、ポルトガル語、タガログ語、タイ語など17言語に対応する翻訳ツールだ。
翻訳サイネージは、製造現場の班長らが朝礼で伝える内容をPCのWebブラウザ上で日本語に入力すると即座に翻訳。現場では、作成した日本語の原稿を読み上げながら、スマートフォンで翻訳サイネージの画面を操作すると各言語に翻訳された内容がモニターに表示される。朝礼の内容を彼らの母国語にすることで、日本語だけでは伝わり切らない部分まで理解できるようになる。
既に三菱電機の複数の国内工場で導入し、製造現場での毎朝の朝礼などに活用している。「母国語でも伝えることで、外国籍の従業員が“寄り添ってくれている”と感じるようになる。『現場の班長が言っている意味が分かるようになった』『なぜこれを守らなくちゃいけないのか理由が分からなかったが理解できるようになった』といった声の他、日本人から『何かあった時にきちんと報告してくれるようになった』という声も上がっている。大手自動車メーカーや電機メーカー、自動車部品メーカーから引き合いが来ている」(三菱電機 ビジネスイノベーション統括事業部 事業推進部 しゃべり描きプロジェクトグループ プロジェクトマネージャー 松原勉氏)
英語などに翻訳された文章を再度日本語に翻訳し直し、正しく翻訳されているかどうか確認する折り返し翻訳や、企業独自の言い回しや専門用語の辞書登録も可能となっている。作成した原稿は保存や他のメンバーとの共有も可能だ。
2025月7月に行われる予定のアップデートでは、言語数が40に拡大する他、音声入力によるリアルタイム表示に対応する。同年秋以降には、画像の登録/表示も可能になるという。
翻訳サイネージが一対複数のコミュニケーションを想定しているのに対して、日本人従業員と外国籍従業員との一対一のコミュニケーションのサポートを図るのが、参考出展した「しゃべり描きアプリ」や「しゃべり描き電子黒板」だ。
しゃべり描きアプリを起動したタブレット端末を、日本語で話しながら指でなぞると日本語とともに翻訳された言語が表示され、自動で読み上げてくれる。画像の表示や矢印などの書き込みも可能だ。現場での作業指示や書類の記入などでの利用を想定している。しゃべり描き電子黒板では、より大画面でのコミュニケーションが可能になる。
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