パズルキューブロボや行動分析AIなど製造現場向けで技術力を示した三菱電機:CEATEC 2024
三菱電機は、「CEATEC 2024」において、ギネス世界記録に認定された「パズルキューブを最速で解くロボット」を出展し、ロボットおよび制御の技術力を示した他、「行動分析AI」や製造現場向け対話ソリューションなど、人手不足に悩む製造現場の課題解決につながるソリューションを紹介した。
三菱電機は、「CEATEC 2024」(2024年10月15〜18日、幕張メッセ)において、2024年5月にギネス世界記録に認定された「パズルキューブを最速で解くロボット」を出展。同社のロボットおよび制御の技術力を示した他、「行動分析AI」や製造現場向け対話ソリューションなど、人手不足に悩む製造現場の課題解決につながるソリューションを紹介した。
ギネス世界記録の認定を受けたパズルキューブロボット
CEATECブースで注目を集めたのが、パズルキューブ(ルービックキューブなど)を最速で解くロボット「TOKUFASTbot(トクファストボット)」だ。トクファストボットは、三菱電機の高速/高精度なFAコンポーネントと制御技術を組み合わせたロボットで、パズルキューブの6面ぞろえで世界記録を達成し2024年5月にギネス世界記録の認定を受けている。
トクファスボットでは、まず対角に置かれた2つのビジョンカメラにより、6面あるキューブの色を3面ずつ認識する。その色情報を産業用PC(IPC)で認識し、パズルキューブの解法を判断する。その解法をモーターの軸の動きに変換し、シーケンサーCPUユニットやサーボシステムコントローラーを経由し6個のサーボモーターを動かし、各面の色をそろえている。全てのコンポーネントが三菱電機製で、高速な情報伝達や精緻な同期制御などを実現し、ギネス世界記録を樹立した。
学習データなしで人の動きを分析できる行動分析AI
製造現場の人手作業を支援する技術として紹介したのが行動分析AIだ。行動分析AIは、作業中に同じ身体動作が繰り返されることに着目し、撮影した動画内の身体動作を骨格検知AIで自動検知して、波形データとして表現する。波形データのうち、類似したものは同じ要素作業、それ以外は異なる要素作業として分類して、それぞれの作業時間の分析や、隙間時間などの把握などが行える。
ポイントが事前学習がほとんど必要ない点だ。骨格検知AIや手や指の動きなどを検知するAIモデルなどは事前に用意しておき、作業者の動作を波形データ化し、類似動作を分類するという仕組みであるため、作業者の動作を学習させる必要はなく、基本的にはすぐに使用することができる。製造現場でのAI活用では事前の画像や映像のデータを用意する負担が大きく、活用が進まないケースもあるが、行動生成AIではこれらの課題を解決している。
製造現場では人による作業のばらつきの抑制が求められており、改善点の分析に多くの時間が費やされているが、行動分析AIを活用することで、作業分析の時間を98〜99%削減できるという。「既に三菱電機内のいくつかの工場では導入が進んでおり、他の工場でも自由に使用できる環境が整っている。また、外部の工場でもいくつか実証が進んでいる」(ブース説明員)。
また、製造現場でのコミュニケーションを円滑に行うための技術として紹介したのが「翻訳サイネージ」だ。人手不足が進む中、国内の製造現場でもさまざまな国籍の作業員が働いている。そのため、朝礼などで一斉に情報伝達をすることが難しい。「翻訳サイネージ」は、マスター言語での内容を同時に多言語に翻訳して表示できるため、複数言語の作業員がいる製造現場でも一斉に情報発信が行える。
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