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メンバーの愛と情熱が源、ルービックキューブ世界最速ロボ開発秘話(前編)三菱電機ギネス世界記録への道(1/2 ページ)

三菱電機の若手メンバーが開発した「パズルキューブを最速で解くロボット」がギネス世界記録に認定された。製作に当たった同社 コンポーネント製造技術センターの若手メンバーに開発の背景などを聞いた。

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 三菱電機が2024年5月24日、「パズルキューブを最速で解くロボット」において0.305秒を達成し、ギネス世界記録に認定されたことを発表した。ロボットには同社のFA機器や制御技術が活用されている。製作に当たった同社 コンポーネント製造技術センターの若手メンバーに話を聞いた。

 前編となる本稿では、ロボットの基本構成や開発の背景などを中心に紹介する。

普段扱っているFA機器にこだわりロボットを構成

 パズルキューブとは、いわゆるルービックキューブとして知られる立体パズルだ。色の付いた26個の立方体(キューブ)で構成されており、各面の上段、中段、下段を回転させながら立方体の6面の色をそろえていく。ハンガリーのエルノー・リービック氏に発明され、1977年の発売以降は世界的に人気を博し、完成までの速さを競う世界大会が開催されるなど、現在も多くの人に親しまれている。

 今回、0.305秒というギネス世界記録を樹立したロボット「TOKUFASTbot(トクファストボット)」(TOKUI Fast Accurate Synchronized motion Testing Robotの略)は、文字通り“瞬きする間もなく”6面の色をそろえてしまう。

高速でルービックキューブを解く「TOKUFASTbot」。ギネス世界記録の条件とは異なるが、本当に一瞬なので心して見てほしい[クリックで再生]

 ここでまず、ロボットのシステム構成を流れとともに説明しよう。TOKUFASTbotは三菱電機のFA機器で主要機器が構成されている。

 まず始めに、対角上に置かれた2つのビジョンカメラ「VS80」がキューブの色を3面ずつ認識する。ビジョンカメラで認識した色の情報を産業用PC(IPC)「MELIPC MI5000」が受けて解法を計算し、モーター軸の動きに換算する。その情報をシーケンサーCPUユニット「R32CPU」が受けてサーボシステムコントローラー「RD78G8」に伝達。6個のサーボモーター「MELSERVO-J5」がキューブの各面を動かし始める。タッチパネル表示器は「GOT2000」を使用している。


TOKUFASTbotの中身[クリックで拡大]
対角線上に置かれた2つのビジョンカメラ[クリックで拡大]
各面を動かす6つのサーボモーター(左)、表示機も三菱電機の製品だ(右)[クリックで拡大]
シーケンサーなどが並ぶ制御盤の中身ものぞかせてもらった[クリックで拡大]

 色の認識には同社独自のAI(人工知能)を用いたアルゴリズムを応用している。キューブの位置やロボットハンドの影によって同じ色の見え方に差異があっても補正し、キューブの色を正確に識別。また、最短の手数でキューブの色をそろえるため、パズルキューブの回転手順を解析する計算プログラムの最適化により演算処理の高速化、高精度化を図っている。また、MELSERVO-J5が90度回転0.009秒の高速高精度回転を行っている。サーボシステムコントローラーから先の通信には産業用ネットワーク「CC-Link IE TSN」が使われており、6軸の同期精度を高めている。

 実際には、同社製ではなくても、EthernetではなくUSBでPCに直結できるビジョンカメラや、より性能の高いPCを使えば高速化はさらに進む。シーケンサーを介さずに産業用PCからモーターを動かすことも可能だ。ただ、FA機器のデモンストレーションという意味合いもあり、今回は同社製のFA機器を使って普段開発している設備と同じ構成にすることにこだわった。

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