積水化学とTRCが次世代電池の分析/評価技術構築に向け協業:研究開発の最前線
東レリサーチセンターと積水化学工業は、二次電池とその周辺部材の評価試験に関する技術的/商業的検討を共同で進めるための覚書を締結した。
東レリサーチセンター(TRC)と積水化学工業(積水化学)は2025年7月10日、二次電池(リチウムイオン電池および次世代電池を含む)とその周辺部材の評価試験に関する技術的/商業的検討を共同で進めるための覚書を締結したと発表した。
既存および次世代電池の分析/評価の精度と信頼性を向上
今回の連携は、TRCの分析力と積水化学の電池関連技術や評価の知見を組み合わせることで、既存および次世代電池の分析/評価の精度と信頼性を高める他、次世代電池に向けた新たな分析/評価技術の構築も視野に入れ取り組んでいく。
一例を挙げると、安全性試験の計画、実施、解析、評価時に発生するガスの詳細分析、材料、構造、性能に関する深掘りの解析を行い、従来の試験結果だけでなく、そこに至るまでの反応メカニズムや現象の理解に必要なデータを提供できる技術の構築を目指す。
GHGの排出量削減を目的に構造転換が求められる産業分野
政府が2020年に行った「カーボンニュートラル宣言」以降、国内では温室効果ガス(GHG)の排出量削減を目的にエネルギーおよび産業の分野で構造転換とイノベーションの創出が求められている。
特に自動車産業では、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車、燃料電池などの電動車(xEV)の普及がGHGの削減に効果があるとされており、車載用リチウムイオン電池や全固体電池の開発が加速している。リチウムイオン電池は高いエネルギー密度と長寿命化を、全固体電池はさらに高い安全性とエネルギー密度を実現することが期待されている。
TRCは、リチウムイオン電池を対象に、電極材料の形態観察や物性測定、電池性能の低下要因の特定など、同電池の材料開発や製造プロセス改善に貢献してきた。全固体電池など次世代電池材料の解析でも、高度な分析力を生かして、研究/技術開発を支援している。
積水化学は住宅用を中心にリチウムイオン電池の事業を2016年にスタートし、2021年からは充放電試験や安全性試験など技術開発向けの支援事業も展開している。電池事業で培った知見を基に、電池材料メーカーや自動車メーカーなどの製品設計や開発に伴走し、材料設計、試作から量産プロセス適合性評価まで、製品開発の工程を包括的にサポートしている。
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