PFUの「ScanSnap」を支える自社開発ASICの系譜、新製品は次世代SoC「IIGA」を搭載:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
PFUはB2C向けイメージスキャナー「ScanSnapシリーズ」の新たなフラグシップモデル「ScanSnap iX2500」を発表。自社開発の次世代SoC「IIGA」を搭載し、ScanSnap史上最速の毎分45枚の高速スキャンを実現するなど従来機種と比べて大幅な性能向上を図った。
第1世代の「Lyon2」、第2世代の「GIプロセッサー」、そして「IIGA」へ
2022年9月にリコーの傘下となったPFUがエッジプロダクトの展開を強化していく上で、同社を代表するScanSnapの製品力を大きく高めることは極めて重要だ。そこで、今回発表した新たなフラグシップモデルであるiX2500は、業務用スキャナー向けに自社開発した次世代SoCのiiGAを搭載している。
iX2500は、毎分45枚の高速スキャンや、応答性の高い5インチ静電容量式タッチパネルの搭載、業務用スキャナーで採用されている光学系技術「クリアイメージキャプチャ」を用いた画質向上、PCやスマートフォンなどの外部デバイスが不要な画像処理、最新のWi-Fi規格であるWi-Fi 6やBluetoothなど無線通信機能の拡充など、従来モデルと比べて大幅な性能向上が図られている。これらの性能向上はiiGAの搭載によるところが大きい。
実はこれまでもPFUは、ScanSnapシリーズに自社開発のスキャナーエンジンASICを搭載することで機能強化を図ってきた歴史がある。
まず、2009年2月発表の「ScanSnap S1500」では、自社開発のスキャナーエンジンASICの第1世代に当たる「Lyon2」を搭載している。Lyon2は、紙のソーティング制御に必要な重なり検出や超音波検出の他、JPEG圧縮、USB 2.0インタフェースに対応する機能を集積している。
次に、2012年11月発売の「ScanSnap iX500」に搭載したのが、自社開発スキャナーエンジンASICで第2世代となる「GIプロセッサー」である。それまでのScanSnapシリーズはスキャニング作業にPCとの接続が必要だったが、タッチパネルを搭載するScanSnap iX500からはPCレスでのスキャニングが可能になった。これは、GIプロセッサーにCPUコアも集積したSoCとすることで実現している。つまり、自社開発のSoCとしてはGIプロセッサーが初代となる。
そして今回発表のiX2500向けに開発したのがIIGAだ。自社開発のスキャナーエンジンASICとして3代目、SoCとしては2代目となる。GIプロセッサーと異なる機能としては、毎分45枚の高速スキャン、2.9秒の高速起動、より大型となる5インチ静電容量式タッチパネルの制御、エッジ画像処理、紙詰まりを防ぐ傾き検知原稿保護、Wi-Fi 6への対応、IoT機器のセキュリティで求められるWPA3/TLS 1.3への対応などがある。また、新たに搭載するBluetoothを用いた無線通信も可能であり、iX2500にスマートフォンをかざすだけで接続して、簡単にセットアップのプロファイルを転送できる機能に活用している(2025年内のiX2500の機能アップデートで実装予定)。
なお、IIGAの名称は、開発を担当した本社のある石川県の方言で「いいね」や「良いね」を意味する「いいが」と、良い画像を意味する「いい画」の両方に由来しているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
リコーが“唯一無二”の複合機を開発、PFUのスキャナー技術を融合
リコーが新開発のA3カラー複合機「RICOH IM C6010SD」「RICOH IM C4510SD」「RICOH IM C3010SD」について説明。PFUの業務用スキャナー、リコーのA3カラー複合機というそれぞれ世界シェアトップの製品の技術を組み合わせたことを最大の特徴とする。初号機誕生から約30年 「自作キーボード界の黒船」HHKB Studioはなぜ生まれたか
高級キーボードの草分け的存在ともいわれるPFUの「Happy Hacking Keyboard」。その最新作が2023年10月に発売された、「HHKB Studio」だ。誕生の背景にある、積み重ねられたHHKBの歴史と、HHKB Studioに詰め込まれた設計思想などを伺った。リコーPFUコンピューティング発足、国内組み込みコンピュータ市場でシェア40%超
リコーは、リコーグループ傘下の産業用コンピュータと組み込みコンピュータの事業を担う新会社「リコーPFUコンピューティング株式会社」を2025年4月1日付で発足させると発表した。リコーのPFU買収はベストマッチ、国内組み込みコンピュータ市場で圧倒的トップに
リコーが、富士通の子会社であるPFUの買収とその狙いについて説明。リコー 代表取締役 社長執行役員の山下良則氏は「リコーが提供するデジタルサービスを広げていく上で、ベストマッチといえる買収ではないか」と強調した。PFUのスキャナーが富士通からリコーブランドへ、2025年度に売上高720億円目指す
PFUは、世界シェアトップとする同社のイメージスキャナー「fiシリーズ」「SPシリーズ」「ScanSnap」のブランドオーナーをリコーに変更すると発表した。リコーとPFUが組み込み機器向けで初の共同開発製品を発売
リコーインダストリアルソリューションズは、組み込み機器用ATXマザーボード「RICOH FB22-L2S」を発売した。第13世代インテルCoreプロセッサとDDR5メモリ対応により、ハイブリッドコアCPUの強力な性能を提供する。