AIが同僚に? マイクロソフトが産業用AIエージェントで示す新たなモノづくり:ハノーバーメッセ2025(3/3 ページ)
Microsoft(マイクロソフト)は世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ(HANNOVER MESSE) 2025」において、ローコード/ノーコードで作れる産業用AIエージェントをはじめとしたAIソリューションを公開。AIの“同僚”によって効率化される製造業界の姿を提示した。
AIエージェント実現に必須!エッジとクラウドをいかに連携するか
さらにこのデモでは、装置のモニタリングおよび、組み換えや動作変更のシミュレーションのためのデジタルツインや、生産状況の確認などが自然言語による対話で可能なAIエージェントも紹介していた。
これらの実現ではクラウド連携が重要となるが、ここでマイクロソフトが強調するのが、エッジからクラウドまでリソースを一元的に管理できる「Azure Arc」を用いた連携ソリューションだ。同社はこれを「アダプティブクラウドアプローチ」と呼んでいる。
説明担当者は「Azure Arcでは、現場にどんな設備があり、その設備からどのようなデータを吸い上げているかなど、現場のデータソースやデータそのものを管理できる。Azure Arcでクラウドとエッジの両方を透過的に管理しながら、ものによってはクラウド側で作ったアルゴリズムを現場のPCに実装し現場のエッジ側でAIやSLM(小規模言語モデル)を動作させ、一方で『LLM(大規模言語モデル)を使いたい』『全体をつなげてみたい』『別の工場と並べて比較したい』といった場合はクラウド側で行う、といった使い分けができるようになる」と語っていた。
なお、クラウド側では統合/分析プラットフォーム「Microsoft Fabric」が『肝』となると強調(Microsoft Fabricの詳細はこちら)。Microsoft Fabricでは製造データソリューションは、センサー、製造実行システム(MES)および、企業資源計画(ERP)のような記録システム、産業オートメーションアプリケーションからのファクトリードメインデータなど、さまざまなソースからデータを取得。データはその後、データレイク(分析に必要な多様なデータを保存するための一元的なリポジトリ)の「One Lake」に保存され、統合、リッチ化、モデリングおよび集約される。
AIを動かすトリガー機能
このMicrosoft Fabricには新たに、データの閾値やドキュメントがアップロードされたという事象など、リアルタイムに何らかの変化点を捉え、それをトリガーとして生成AIに作業をさせる「Real-Time Intelligence」という機能を搭載。説明担当者は「例えば、エッジAIが視覚的に何か異常を検知し、その画像ファイルをアップロードした際、アップロードされたという事象をトリガーとしてAIが作動し、人間にアラートを出すと同時に、画像に映り込んでいるものが何で、それに関連するデータはどれでといった報告書を添付してメールを送る、といった動作が可能になる」と説明していた。
なお、デジタルツインについても、従来はAzureの単独したサービスとして存在していたが、今後は「Digital Twin Builder」としてMicrosoft Fabricの機能の1つになるという。説明担当者は「デジタルツインというと3Dのイメージがあるが、データ構造そのもののことを意味する。そのデータ構造をMicrosoft Fabricの機能を使って定義しDigital Twin Builderで整える。3D化が必要なものはNVIDIAと連携を進めていて、Omniverseを活用していく」としている。
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