口をパクパクさせながら泳ぎ回る魚を釣る「魚釣りゲーム」の仕組み:100円均一でモノの仕組みを考える(11)(3/3 ページ)
本連載「100円均一でモノの仕組みを考える」では、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解/観察して、その仕組みや構造を理解しながら、製品開発の過程を考察していきます。連載第11回のお題は、ゼンマイで動き、磁石で魚を釣り上げる玩具「魚釣りゲーム」です。
魚を釣り上げる仕組み
釣り竿を使って、魚パーツを釣り上げる仕組みはとてもシンプルです。
釣り竿の先端には、小さなネオジム磁石が仕込まれており、魚パーツの口の中にある金属片に近づけることで、ピタッと吸い付き、魚を釣り上げることができます(図7)。前述の通り、魚パーツの口がパクパクと開閉するため、ゲーム性が高まります。
以上のように、魚釣りゲームの仕組みは非常にシンプルな機構の組み合わせによって成立していることが分かります。
作りの面では、電池やモーター、バネといった定番パーツを使わずに、ゼンマイによる機械式駆動を採用し、形状や素材の工夫によって、安全かつ低コストな製品を実現しています。ゲーム性の面でも、本体ベースの傾斜によるアクション制御は、単純な構造でありながらも、魚のリズミカルな動きを再現し、磁石で釣り上げることで得られるフィードバック性は遊びに手応えをもたらします。こうした工夫をこらした仕組みを、最小限の部品点数、かつ低コストで実現している点は実に見事です。
「安かろう、悪かろう」と見られがちな100均玩具ですが、この魚釣りゲームは「最小限の要素で最大限の遊びを実現する」という、製品設計の奥深さ、面白さをあらためて感じさせてくれました。コスト制約の中で“遊び”と“動き”を両立させる設計は、プロダクトデザインや機構設計に携わる人にとっても、得られるヒントが多いのではないでしょうか? (次回へ続く)
著者プロフィール:
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。
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