生成AI×プロセスマイニング×RPAで業務変革を高速化、インフォアが新スイート:製造ITニュース
インフォアジャパンは、プロセスマイニングやRPA、生成AIなどの機能を備え、業務プロセス変革を支援するクラウドスイートである「Infor Velocity Suite」の提供を開始したと発表した。
業界特化型クラウドカンパニーの米国Infor(インフォア)の日本法人であるインフォアジャパンは2025年6月3日、日本での戦略を説明するとともに、プロセスマイニングやRPA(Robotic Process Automation)、生成AI(人工知能)などの機能を備え、業務プロセス変革を支援するクラウドスイートである「Infor Velocity Suite」の提供を開始したと発表した。
業界別クラウドソリューションで力を発揮するインフォア
インフォアのグローバルでの状況について、インフォア エグゼクティブバイスプレジデント、インターナショナルビジネス担当ゼネラルマネジャーのWolfgang Kobek(ウォルフガング・コベック)氏は「インフォアは米国企業だが、最近は欧州、アジア、日本など米国外での成長が続いている。特にSaaS(Software as a Service)は24%成長となり、10億米ドル以上の売上高になっている。その中で日本は重要な市場だ。成長のポテンシャルが大きい」と語る。
インフォアは、SaaS型のERP(Enterprise Resource Planning)システムなどを展開しているが、最近では業種特化型のクラウドカンパニーとして関連するさまざまな先進テクノロジーやサービス、ソリューションを展開している。
「産業特化型のソリューションを展開することで、業界のベストプラクティスを生かすことができる。クラウドサービスでありながら、業界特有の商習慣に対応し、より早く価値を得られる」とインフォア アジア太平洋地域・日本担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーのTerry Smagh(テリー・スマグ)氏は強みを説明する。特に日本市場では、自動車、産業用製造機械、食料/飲料、ファッションなどの業界に向けた提案を強化する。
プロセスマイニングや生成AIで業務プロセスを変革
ただ一方で、これらの先進テクノロジーを活用して期待した成果を得られたとする企業は30%未満にとどまるという調査結果もある。業務プロセスに先進テクノロジーを最適な形で適用し、ビジネス価値に結び付けることが求められている。
そこで、インフォアが新たに展開するのがInfor Velocity Suiteだ。プロセスマイニングやRPA、生成AIなどをあらかじめ組み込み、インフォアが展開してきた業界別クラウドスイートに蓄積されたデータを活用した業務プロセス変革を実現する包括的パッケージとなっている。
Infor Velocity Suiteにより、業務プロセスの「診断」「自動化」「最適化」というサイクルを回すことで、改善すべきポイントや自動化すべきポイントを把握できるだけでなく、オペレーションをシステム化して効率化できる。そのため、ビジネス価値をすぐに得ることができる。AIやRPAなどのテクノロジーの適用に無駄な時間を割くことなく、業務で必要なプロセスに直接的な効果を生み出すことができる。
診断については「Infor Process Mining」を活用し、運用プロセスの詳細な分析を行う。「Infor Cloud Suite」内のプロセスインサイトを診断することで、標準プロセスモデルから逸脱している部分や重要なボトルネックを特定し、改善すべき領域を簡単に見つけられる。
自動化と最適化については、診断フェーズで見つかった改善点を、生成AIやRPAを活用して修正する。これにより、手作業の削減、インサイトの提供、重要なアクションの自動化などを効率的に行える。事前構築済の業界別ユースケースを収録した「Infor Value+」カタログを活用することで、数日から数週間で価値を実現できるという。
Infor Velocity Suiteの位置付けについてコベック氏は「Infor Cloud Suiteの顧客に付加価値を生み出す役割を担う。RPAやプロセスマイニング、生成AIは、単独のアプリケーションを活用することもできるが、ビジネスで成果を生み出すためには、業務データとの緊密な連携と活用が必要だ。Infor Velocity SuiteはInfor Cloud Suiteとの組み合わせでこうした連携を完璧な形で行えることが特徴だ」と述べる。
販売については、既存のInfor Cloud Suiteがアドオンで導入するケースや、最初からまとめてInfor Velocity SuiteとInfor Cloud Suiteを提案するケースを想定する。Infor Velocity Suiteの価格については、機能ごとのモジュールとして提供し、1つの機能ごとに「年間15万〜25万米ドルとなる」(コベック氏)としている。
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