三菱電機は3年間で1兆円のM&A投資を見込むが、8000億円規模の事業で終息見極め:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
三菱電機は経営戦略について説明した。構造改革として2025年度中に8000億円規模の事業見極めを行う方針を示した他、今後3年をめどに1兆円をかけて新たなM&Aを進める計画などを明らかにした。
変革のカギを握るデジタル基盤「Serendie」
また、イノベーティブカンパニーへの変革を実現するために「ビジネスモデル変革」「デジタル基盤強化」「マインドセット変革」の3つに取り組んでいく。
ビジネスモデル変革は、三菱電機が従来強かったコンポーネント販売(モノ売り)だけでなく、デジタル基盤「Serendie」を生かしたデジタルサービス(コト売り)で価値を提供する。
三菱電機 取締役 専務執行役で、CDO兼CIOの武田聡氏は「三菱電機の強みはコンポーネントの強さにあるが、Serendieを通じてそのコンポーネントが生み出すデータを分析し、課題解決に向けたサービスを生み出す。それにより既存の顧客からその先の利用者や管理者に新たな価値を提供できるようにする。また、コンポーネントの使用データによる知見を新たな設計などモノづくりにフィードバックし、さらなるコンポーネントの強化につなげる。このような新たなビジネスモデルに変革する」と考えを示す。これらを形にすることで、2030年度までにSerendie関連事業で1.1兆円を目指す(現在は6800億円)。
例えば、この新たなビジネスモデルが形になったものの1つとして熱関連トータルソリューションがある。従来はビルオーナーや製造業に対し、空調や給湯機器のコンポーネントを提供していただけだったが、これらで得られたデータを分析し、エネルギー需要の高精度予測と予測値に基づいた電力と熱のシステム全体の最適運転を実現する。これにより、顧客の脱炭素化に貢献する。
デジタル基盤の強化ではまず、ITとDX、AIに関わる部門が一体となった組織運営を行えるようにした。新設したデジタルイノベーション事業本部に、DXやAI活用の推進部門と三菱電機デジタルイノベーションを集約し、分散していたDX人財4000人を集め、Serendie関連事業の対応力強化を進めるとともに、業務プロセス改革を効率的に推進できるようにした。一方で、社内業務プロセス変革を進め、業務プロセスの標準化やデータの一元化、レガシーITシステムの刷新などを推進する。1300億円の投資を行う一方で、1900億円の費用削減効果を見込んでいる。
生成AIに関するプロジェクトも推進。「業務効率2倍」を目標に掲げ、社内公募により1000以上のアイデアを集めた。現在はこれらを基に60のプロジェクトを推進している。例えば、事務部門では、資料の自動生成や戦略立案、問い合わせ対応の自動化やエラー検知などで活用している。モノづくりに関わる領域では、設計部門で仕様の照合やコスト見積もり、コード生成やテストケース生成、デザインレビュー支援などで活用しているという。また、製造現場では、変種変量生産への自律的な対応を実現するために、複数のAIエージェントを組み合わせた「バーチャル生産管理者」を構築する取り組みを進めている。このバーチャル生産管理者については、社内工場で実証試験を行った後、社外へのサービス展開も計画しているという。
また、DXやオープンイノベーションを推進する拠点として2025年1月に横浜市に共創空間「Serendie Street Yokohama」をオープンしたが、同年5月に米国ボストンに新たな拠点を開設した。今後さらに、グローバルで拠点を用意し、共創やサービス創出に取り組んでいく。
マインドセット変革としては、アジャイルなマインドセットを持ったDX人材の拡充を進める。社内で育成機関「DXイノベーションアカデミー」を設立した他、認定制度やスキルセット、学習コースを整備した。また、早稲田大学の教育プログラムを活用し、DX人材育成に関し互いに協力を進めていく。DX人材は、2030年度には2万人に倍増させる計画だ(2024年度は1万人)。
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