SiCデバイスの効率を最大化する絶縁型サーミスタ、すぐそばで動作温度を測れる:人とくるまのテクノロジー展2025
村田製作所は、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」において、パワー半導体用NTCサーミスタ「FTIシリーズ」を展示した。
村田製作所は、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において、パワー半導体用NTCサーミスタ「FTIシリーズ」を展示した。既に量産を開始している。
FTIシリーズは、チップタイプのNTCサーミスタを樹脂モールドでパッケージングするとともに、上面にワイヤボンディングに対応する電極を形成した絶縁型のサーミスタである。樹脂モールド構造かつワイヤボンディング対応のサーミスタは「世界初」(同社)だという。サイズは2012(2.0×1.2×0.85mm)で、抵抗値(25℃)は5kΩ±1%、B定数(25/50℃)は3380K±1%、動作保証温度は−55〜175℃、絶縁破壊電圧は3.5kV。
EV(電気自動車)の電動システムに用いられるパワーモジュールには複数のパワー半導体が組み込まれている。これらのパワー半導体は発熱量が大きく、温度上限を超えて動作させると焼損などによって破損するリスクがある。このため、パワーモジュール内の温度を計測して温度上限に近づいた場合には冷却したり、動作を制限したりする必要がある。この温度計測に用いられているのがサーミスタである。
ただし、パワーモジュール内でパワー半導体を実装している電極周辺には高い電圧がかかっており、一般的なサーミスタはこの電圧に耐えられないため、パワー半導体から離れた位置にしか設置できなかった。「パワー半導体は上限に近い温度で動作するのが最も効率が高い。そのためには、パワー半導体のすぐそばでより正確な温度計測ができた方がいい。特に、EV向けで新たに採用されているSiC(シリコンカーバイド)デバイスは、従来のシリコンパワー半導体よりも耐熱性が高く、その高い効率を引き出す上でも、すぐそばで正確な温度計測をすることに大きな意義がある」(村田製作所の説明員)。
FTIシリーズは、樹脂モールド構造により絶縁性を確保しているので、パワー半導体用のパッド上に直接配置することが可能だ。また、ワイヤボンディング対応の上面電極によりサーミスタ用のパッドと接続できる。今後は、抵抗値(25℃)で10k/100kΩ品を追加する予定である。
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