障害に寄り添い共に活躍する現場へ、逆境で得たITスキル生かして工程改善も:メイドインジャパンの現場力(2/3 ページ)
障害者と健常者が共に働くパナソニック コネクト吉備は、グループの事業転換の影響を受けながらも、リスキリングで得た技術で新たな挑戦に取り組んでいる。同社が進めている具体的な活動内容を紹介する。
ITスキルを生かして工程改善、障害に寄り添ったモノづくり
パナソニック コネクト吉備では「働きやすさ」と「働きがい」の両立を目指している。2つの言葉は似ているが、ベクトルが違うと中村氏は語る。「働きやすさを重視すると働きがいは少なくなり、働きがいを重視すると働きにくくなるという関係にある。それぞれを両立させることが重要」(中村氏)。
働きやすさに関しては、障害に寄り添った設備、環境づくりを、働きがいに関しては、新しいことへの挑戦や学ぶ喜びなどを育むことに取り組んでいる。そして、リスキリングで磨いたITスキルは、個々の障害に寄り添った工程作りにも生かされている。
工場内は車椅子でも通行に支障がないよう通路幅を広めにとっており、掲示物も車椅子からの目線の高さを意識して貼られている。作業台の高さは、車椅子の高さに合わせて変えられるようになっている。台車は、車椅子の従業員でも運びやすいように、通常4隅にあるキャスターを中心部にも取り付けている。こうすることで、中心を起点に片手で簡単に回転でき、扱いやすくなる。
組み立て工程への部品供給は、表示灯で知らせる。「知的障害がある作業者が“水すまし(部品供給)”を担っているが、彼にとっては、いつ持っていったらいいか分からなくなり、不安になることが一番怖い。そのため、表示灯の色が緑から赤に変わったら持っていけばいいと、はっきり示してあげることで、安心して働くことができる」(中村氏)。
キッティング時にスマートフォンで品番照合などができる、材料管理用のアプリも内製した。例えば、棚にある材料のQRコードを読み込むと、キット情報を照合して間違っていればNGを通知する。また、非定常作業が行われた場合は、関係者に連絡され、現場に行って確認する仕組みになっている。在庫情報や使用履歴も確認できるため、棚卸し作業の正確性やスピードも上がった。
リモートカメラコントローラーの組み立てでは、部品の取り間違いやビスの有無、ラベルの品番など122カ所の外観検査を4台のカメラを用いて自動で行う画像認識装置を内製した。「誰が検査しても同じ結果になるよう、カメラによる検査を導入した」(中村氏)。同じように、カメラを使って包装作業をチェックする作業支援システムも開発した。
工場では、聴覚障害がある従業員も働いている。そこで、音声字幕ツールを内製した。これはモニターとカメラを備えており、相手の口元の映像とともに、発した言葉を文字に起こして表示するツールだ。聴覚障害者は、相手の口の動きから言葉を読み取る口話や手話、筆談でもやりとりができるが、健常者が長い話をすると伝わり切らないケースがあった。音声字幕ツールによって口話と文字を組み合わせることで、より円滑なコミュニケーションを可能にした。
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