GaNデバイスの真価は縦型にあり、豊田合成がGaNウエハーとGaN-MOSFETを披露:人とくるまのテクノロジー展2025
豊田合成は、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」において、GaNウエハーとGaN-MOSFETに関する研究開発成果を披露した。
豊田合成は、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において、GaN(窒化ガリウム)ウエハーとGaN-MOSFETに関する研究開発成果を披露した。
高効率のパワー半導体としてSiC(シリコンカーバイド)デバイスと並んで期待されているのがGaNデバイスである。ただし、GaNデバイスの多くは横型デバイスといわれるGaN-HEMTであり耐圧は650V程度が上限となっており、数十k〜数百kWの出力になるEV(電気自動車)のインバーターなどには適さないとされている。しかし、縦型デバイスのGaN-MOSFETを実現できれば耐圧1200V以上が可能になり、SiC-MOSFETと同様にEVのインバーターに適用できるようになる。
GaN-MOSFETを実現する上で鍵になるのが、GaN基板上にGaN結晶をバルク成長させて製造するGaNウエハーである。豊田合成では、青色LEDで培った技術を基に、数万個の微小なGaNドットを形成したポイントシード基板を起点に、Na(ナトリウム)フラックス法を用いてバルク成長の基になるGaNの種結晶を作製する技術を開発している。このGaN種結晶を用いれば、大型で高品質なGaNウエハーの製造が可能になるという。
展示では、このGaNウエハーを基に製造したGaN-MOSFETで構成する出力20kWのインバーターを披露した。環境省のプロジェクト「超低抵抗GaNウェハを用いた高効率インバータの開発・検証事業」の成果で、パナソニック、大阪大学、名古屋大学と共同で開発/実証を行っているものだ。パワーモジュールには、スイッチング素子1個当たりで2mm角サイズのGaN-MOSFETを4個用いている。2025年度末までに出力50kWのインバーターを開発/実証する予定であり、そのためにはより大電流を流せる大サイズのデバイスが必要になるとみられる。
なお、豊田合成は、GaN種結晶をGaNウエハーメーカーに供給することから事業化する方針であり、これと並行する形でGaN-MOSFETの開発も進めていく考えだ。「2035年に車載向けでGaN-MOSFETを実用化したい」(豊田合成の説明員)としている。
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