日本の会社員は会社への信頼度が低く、学習意欲も低い――APACとの比較で:キャリアニュース
ランスタッドが「2025 ワークモニター アジア太平洋版」を発表。日本はアジア太平洋地域各国と比較して「会社への信頼度」が低く、「仕事は仕事」と割り切る考え方が強かった。
総合人材サービスを提供するランスタッドは2025年5月14日、「2025 ワークモニター アジア太平洋版」(日本語版)を発表した。
同調査は、アジア太平洋地域(APAC)の18〜67歳の労働者5759人を対象とした。調査国および地域はオーストラリア、中国、香港特別行政区、インド、日本、マレーシア、ニュージーランド、シンガポールだ。
「仕事への目的」について調査したところ、APACでは50%が仕事に目的を見いだしていると回答した。Z世代を見ると、上の世代と比べて仕事に目的意識を見いだしにくい傾向があり、「お金に困らなければ働かない」と51%が回答。団塊の世代の38%と比べ、回答割合が高かった。
また、Z世代は、仕事を通じて社会に貢献したいという意欲が高く、従来の企業文化には魅力を感じにくい傾向が見られる。日本の回答者を見ると、「お金に困らなくても仕事を続ける可能性が高い」が64%を占めており、日本の働き手が仕事の目的や安定性、役割への忠誠心など本質的な要因をより重視していることがうかがえる。
職場に対して、組織の一員であると感じる「帰属意識」を感じられない場合、APACの労働者は「仕事を辞める可能性」が世界平均より4ポイント高かった。「職場に良い友人がいれば、収入が減っても構わない」という回答については、世界平均が36%で、APACはそれを上回る43%だった。特にインドでは63%が「職場に良い友人がいれば、収入が減っても構わない」と回答している。
日本の労働者は、「職場のコミュニティー意識」や「帰属意識」が低い傾向にあり、「仕事は仕事」と割り切る考え方が強かった。日本は「職場に良い友人がいれば、収入が減っても構わない」の回答も19%と著しく低かった。
また、日本は、APACの中では「雇用主や上司への信頼度」も低い水準にある。「職場で自分自身をある程度隠している」の回答割合は63%で、世界平均の62%より高く、APAC平均の69%にも迫っている。それでも「職場に帰属意識を感じられなければ仕事を辞める」と日本の労働者の3割以上が回答。APACの59%、世界の55%に比べれば低いが、帰属意識が重要な退職理由の1つとなっている。
APAC各国と日本で、学習と能力開発の機会に対する意識に差
「学習と能力開発(L&D)」の機会については、APACの労働者はL&Dの機会を強く希望しており、特に「AI(人工知能)関連」のスキル習得に高い関心を示している。しかし、日本を見ると「職務においてAIを含む最新技術を使う準備が整っている」と回答したのは40%。APACの73%、世界平均の71%と比較すると低かった。
「AIトレーニングはL&Dの需要が最も高い」と回答した割合も、APACの27%、世界平均の22%と比べて、日本は16%と低かった。「過去6カ月間にL&Dの機会提供を受けた」人の割合については、日本は13%と調査対象国の中で最も低い数値だった(APAC:41%、世界平均:34%)。「労働者のスキルが技術革新に後れを取らないようにする責任が雇用主にある」の回答割合は、APACが29%、世界平均が27%、日本は35%だった。
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